研究概要 |
本研究は、分子認識に働く分子間力、特にCH-π相互作用に着目したモデル化合物の構築により解明し、さらにキラル化合物の光学分割に応用るすことを目的としている。このモデル化合物として、(R)-フェニルグリシル-(R)-フェニルグリシン〔(R,R)-1__〜〕の固相を取り挙げて研究した結果、以下の成果を挙げることができた。 1.分子間相互作用 種々のスルホキシド類と(R,R)-1__〜固相とを水共存下で攪拌すると、スルホキシドの固相への取り込みが見られる。その取り込み量とエナンチオ過剰率、および競争的取り込み実験の結果、(S)-イソブロピルフエニルスルホキシドと(S)-t-ブチルフェニルスルホキシドがそれぞれのラセミ体から高選択的に取り込まれることがわかった。一方、エチルフェニルスルホキシドやプロピルフェニルスルホキシドでは取り込みは見られなかった。これらの事実と取り込み錯体の単結晶X線回折の結果から、gem-ジメチルとフェニル基の相互作用が本取り込みに重要であると考えられる。さらに、ベンゼン環-ベンゼン環相互作用と水素結合が関与した三点配位による分子認識がスルホキシドの不斉取り込みに対する駆動力と推論された。 2.光学分割 前述の(R,R)-1__〜固相はメチルフェニルスルホキシドやベンジルメチルスルホキシド誘導体も不斉認識を伴いながら取り込むことを見い出した。この取り込みの駆動力の一つに、電子吸引性スルフィニル基に直結したメチル基と(R,R)-1__〜のフェニル基との相互作用が考えられる。この取り込み錯体をクロロメタンで洗浄すると、取り込まれたスルホキシドを取り出すことができ、(R,R)-1__〜を回収できる。この事実を活用して、メチルフェニルスルホキシドの光学分割法を確立した。
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