研究概要 |
電子供与体と受容体の間にみられる光電子移動はcontact ion pair(CIP)solvent separated ion pair(SSIP)及びfree ion(FI)の三種の状態から反応をおこす。それぞれ異る反応性を示すので、各段階の反応生成物を同定し、その反応状態を制御することにより光電子移動反応を制御する系の確立を目指す。次の三種の系を検討し注目すべき結果を得た。 (1)トリシアノベンゼン-2,3-ジメチルブテンの系において、直接Exciplexを経る系では1,3-付加により環状化合物を与えるが(CIPを経る反応)、メディエ-タを用いることによりFIを経る反応が強調され置換生成物を与えることを明らかにした。 (2)テトラアルキルシリコン、ゲルマニウム、錫やポリシラン類は電子供与体として働き、テトラシア、ベンゼンの光アルキル化を行う新反応を発見した。このときラジカル時計としてトリメチル(5-ヘキセニル)誘導体を用いると中心金属に依存して生成する環状化合物/直鎖化合物の比が変化した。メディエ-タ-を用いた時の比85/15を基準に用いるとSiでは55%、Geでは40%、Snでは16%がCIPから反応するものと解される。光電子移動反応では始めてSn2的な二分子置換反応の証明がえられたことにも連なり、注目すべき結果である。 (3)メディエ-タ-を用いる光反応によりカチオンラジカルを作らせ、ついて単分子分解反応でC-C結合を切断する方法を確立した。この方法は気相における電子衝撃で生成する分子イオンの単分子分解反応と類似しており、マススペクトロメトリ-ミメチック反応と呼べるであろう。N,N-ジメチル-2,2-ジフェニルエチルアミン-ジシアノアントラセンの系がその典型である。
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