研究概要 |
希土類金属は17個の元素からなる周期律表で最大のグル-プであるがその有機合成への利用の例はまだ少ない。我々はジアリ-ルケトンをイッテルビウム金属(Yb)とTHF中で反応させるとメタラオキシラン中間体が生成し、ケトン炭素の極性がアンポ-ルされ求核性になり種々の求電子剤と付加反応を起こして非対称ピナコ-ル、1,3-ジオ-ル、α-ヒドロキシケトン等を容易に与えることを見いだしている。本研究ではこの反応を用いて、1)光学活性1,3-ジオ-ルの合成反応および、2)Ybとの反応をケトンの代りにイミンに適用することにより類似の中間体を発生させ、イミンの還元や二量化反応等の新合成反応を開発することを目的として検討し、以下に示す成果を得た。 1)光学活性1,3-ジオ-ルの合成反応の開発。 まずベンゾフェノンとYbの反応からメタラオキシラン中間体を生成させておき、これにシクロヘキセンオキシドを反応させるとOH基とPh_2COH基がトランス位にある1,3-ジオ-ルが67%収率で選択的に得られたことより、本反応ではメタラオキシラン中間体はエポキシドのO原子の反対側から攻撃し、SN2タイプの機構で進行することがわかった。従ってキラルエポキシドを用いると光学活性1,3-ジオ-ルが合成できるはずである。そこで種々のキラルエポキシドとベンゾフェノン、9-フルオレノンの反応を検討した結果、キラル1,3-ジオ-ルが高い光学純度(90〜99%ee)で容易に得られることが明らかになった。キラル1,3-ジオ-ルは生理活性物質の合成中間体として重要であり本研究によって初めてケトンとエポキシドからの合成が可能となった。 2)イミンの還元および二量化による1,2-ジアミノエタンの合成。 Ybとケチミンの反応からはアミンが、アルジミンからは二量化生成物の1,2-ジアミノエタンが高収率で得られることが明らかになった。
|