研究概要 |
研究目的 これまで不可能であったGaAsと金属のショットキ-接合障壁高さの制御が最終目標である。 その実現の為に,半導体表面の硫黄処理効果の理解と,ショットキ-接合の生成過程の把握が必要である。 研究成果 過去数十年にわたり不可解であり続けたGaAs表面の問題を,一挙に解決することは出来ないがその手掛かりは色々得られていると言ってよい。今後の多面的な実験の積み重ねによって解答は得られると思っている。重要な実験結果として,1。(NH_4)_2S_x水溶液以外の無水系の硫黄(化合物)溶液を用いても,同様の効果は得られた。2。硫黄処理効果の持続性は,多くのパラメ-タで変化する。3。放射光電子放射スペクトルの解析から原子間の結合状態の重要なデ-タが得られた。4。同じ手法により,ショットキ-金属を付着させる過程で,硫黄がどのように働いているかの知見が得られた。5。nおよびp型GaAsを用いたショットキ-接合で,相補的でしかも金属の仕事関数依存性の強い障壁高さが観測された。6。同様に,MIS構造において,1x10^<11>/cm^3eV程度の記録的な界面準位密度が得られた。7。以上の結果を統合して,次のような処理表面のモデルが出来た。(1)処理液に含侵することにより,自然酸化膜とそれに隣接する欠陥域がエッチされる。(2)この新鮮な面は,硫黄分子で端止めされている。処理液から取り出した面は,数百オングストロ-ムの淡黄色を示す硫黄分子層で覆われている。(3)真空管で,硫黄分子は昇華し,着色は消失するが,2ないし3原子の鎖状あるいはアモルファス状の硫黄分子が,主として砒素原子と結合している。(4)250℃以下で加熱すると,硫黄分子は解離し単原子層となる。(5)500℃以下の加熱で,硫黄原子はGaと結合する。(6)より高温では硫黄は脱離し,上記(2-5)で見られた処理効果は失われる。
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