まず、本質的な点に着目した簡単化を行い当課題の全体的見透しを得た。その骨子は、中性子星物質→中性子物質+電子ガスと近似する、有限温度のハ-トリ-・フォック方程式系を扱い熱力学諸量と系の状態方程式(EOS)を導く、この結果を超新星物質の特質に照応してエントロピ-一定、レプトン混在比一定の条件下で再構成し所要のEOSを得る、というものである。このEOSに基づき、誕生時の熱い中性子星の諸性質、冷却により解放し得るエネルギ-、SN1987Aのニュ-トリノバ-ストとの関連、等を論じた。この研究は当課題遂行上の方法と道筋を確立し得た点で重要と考えている(別掲第3論文)。 上記アプロ-チを、中性子物質→非対称核物質、通常椎→π中間子凝縮を含む相、とより一般的な場合に適用した。超新星物質に対応する核物質は陽子が30〜40%混在した非対称核物質であるが、これは純粋中性子物質と対称核物質(陽子数=中性子数)の内抻により求める。現在、EOSと熱力学諸量を求める計算を終了し、より現実的な熱い中性子星モデルを求める準備に入っている。 ところで、超新星物質を更に実際的に扱うには、レプトン(電子+ニュ-トリノ)数一定の下で陽子数(荷電中性により電子数に等しい)が密度と温度によってどう変わるかを調べねばならない。これを実行して初めて本研究課題が最も現実的なレベルで遂行されたことになる。これに向けての準備過程として、β平衡下にある“陽子+中性子+電子"系を扱い、温度や密度によって陽子混在度がどう変わるか、零温度の場合に較べて何が本質的か、を議論した。これにより本格的な計算への見透しが得られた(別掲第4論文)。 また、当課題と関連して、π凝縮中性子星とパルサ-グリッチを関係づけるモデルを提案した(別掲第5論文)。
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