研究概要 |
リンパ球サブセット抗原解析によるマカク属サル類の免疫学的加齢 我々が作成したマカク属サルの末梢血単核球に特異的に反応する単クロ-ン抗体,U1(CDl8),U2(CD8),U3(CD8+α),U4(CD3?),U5(NK),UM-1(CD14?),UH-2(classII),およびマカク属サルに反応するヒト用抗体Leu3a(CD4),Leu15(CDllb)を用いて,加齢にともなうカニクイザルの末梢リンパ球サブセットの動態を解析した。その結果,成熟T細胞(CD4,CD8陽性細胞を含む)が加齢と共に増加し,その増加率は10歳頃までが顕著であった。サプレッサ能を持つといわれているCD8^+,CDll^+サブセットについては年齢に依存した変化は見られなかった。B細胞,活性化NK細胞は加齢と共に減少した。またCD4+CD8+のdouble positive細胞の出現率も加齢と共に増加する傾向があった。以上まとめると,11歳頃まで成熟T細胞は急激に増加し,60-70%に達する。逆にB細胞は10歳頃までに減少傾向を示し以後一定になる。この時期までに末梢リンパ球の成熟過程が完了するものと思われる。 2.マカク属サルのCD4陽性株の樹立と関連抗原の発見 アカゲザルの末梢血単核球を培養し,CD4陽性でIL2に依存して増殖するT細胞株を樹立しTPCRhlと命名した。このものは,Leu3a(CD4),CD45R陽性で有り,Leu8陰性であった。またサルのレトロウイルスであるSIVmac251およびSIVmneは,この細胞株で増殖することを確認した。次に,この細胞株を抗原としてU6と命名した単クロ-ン抗体を作出した。U6抗体はマカク属サルのCD4陽性細胞のほとんどすべてとB細胞の約半数とは反応するが,CD8陽性細胞に対しては20%程度しか反応せず,NK細胞,単球,顆粒球とはほとんど反応しない。アカゲザルにSIVmac251を接種し,6ヵ月後の末梢血を調べたところ,CD4陽性細胞中のU6陽性比率が選択的に低下していた。 3.カニクイザルのMHC カニクイザルの相互免疫により得られた血清(508lots)と,マレ-シア産の野生由来非血縁ザル100頭および26家系に属するサルから得られたリンパ球の反応から以下のような結果を得た。 血清間の特異性の相関解析で28の血清クラスタ-を折出した。各クラスタ-毎にリンパ球と血清の実際の反応を配列(serogram解析)し,クラスタ-を構成する各血清の反応パタ-ンがよくそろったクラスタ-を9個選んだ。この9個のクラスタ-が実在する9抗原(9遺伝子)に対応すると仮定し,26家系の家系の遺伝解析を行なつた。その結果これらの遺伝子がメンデル遺伝し,共優性であるして7個の遺伝子が3個の遺伝子座に支配されるとする仮説においてハ-デイ・ワインベルクの法則が成立った。
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