研究概要 |
これまでにヘテロサリックな株NC4(mat A)とHMI(mat a)の細胞融合に関わる分子として,gp70,gp138の二種類の膜タンパクを同定することができた。それらの解析を進めて,次のような結果が得られた。 1.gp70,gp138の精製:gp70はNC4の膜タンパクを不動化したアフィニティカラムにCa^<2+>存在下でHM1細胞の膜成分を結合させ,EDTAで溶出するアフィニティクロマトグラフィ-によって約100倍に,gp138はWGAのアフィニティカラムで約50倍に精製した。gp138については,二次元電気泳動でさらに精製し,N末端の12アミノ酸の配列を既に決定している。 2.単クロ-ン抗体の作製:抗gp138単クロ-ン抗体,抗gp70単クロ-ン抗体ともに,単一タンパクを認識するが細胞融合を阻害しないものと,細胞融合を阻害するがウエスタンブロッティングで多数のバンドを認識するもののみが得られた。後者のエピト-プは糖であり,実際に細胞融合に糖鎖が関与していることを示唆する実験結果が他にも得られている。今後は既に得られた抗体を用いての解析を進める一方で,両タンパク質の精製や除糖等を行なって,融合を阻害してかつ単一のタンパク質を認識する単クロ-ン抗体を得るつもりである。 3.異なる交配様式間の異同の解析:ヘテロサリックな系で得られた結果の普遍性を検討する目的で,ホモサリツクな株AC4における細胞融合の解析を試みた。AC4は同調的に細胞融合を起こさせることに成功していないため,gp138,gp70の存在については結論が出ていない。しかし,AC4の培養上清中に有性的細胞融合を促進する因子を発見し,かつそれがヘテロサリックな系にも同様の効果を持つことを見いだした。このことから交配様式は異なっても細胞融合機構に類似点は多いことが推察される。
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