研究概要 |
成長点における花芽分化の刺激は、篩管を通じて伝達されていると考えられている。これまでの多くの実験結果は、何らかの物質が篩管を流れていることを示唆している。従って、篩管液を採取して、その中に花芽誘導物質を見つけだそうという試みは、より直接的な実験手段であると考えられる。本年度は、特にイネ篩管液中のタンパク質組成が生殖過程に移行する際に何らかの変動を示すかどうかを明らかにすることを目的とした。感光性に違いのあるイネ品種を用い、光条件と篩管液タンパク質組成の関係を調べた。また、光条件によりタンパク質自身の質的変化(リン酸化)が起こるかどうかについても実験を行った。 (1)イネ篩管液のタンパク質組成 まず、基本的なタンパク質組成を明らかにするために、得られた篩管液をSDS-PAGE、2次元電気泳動で分析した。篩管液中のタンパク質濃度は、約200ng/μlであった。分子量10-150kDの間に多種類のタンパク質が存在し、分子量17,21,23,35kDのタンパク質が主要なものであった。 感光性遺伝子E3を持つ品種EG3を連続光下で28日間生育させた。29日目から短日処理(明10時間)を開始し、開始後1日、2日、3日、1週間、2週間、3週間目に篩管液を採取した。それぞれのサンプルを2次元電気泳動で分析し、連続光下で生育させたイネよりのサンプルと泳動パタ-ンを比較した。タンパク質のスポットの変化が日長条件の変化と対応しているものが数スッポト見られた。 (2)リン酸化、脱リン酸化を受ける篩管液タンパン質 葉身先端より^<32>PでラベルしたATPを1日以上吸収させた。暗条件下では、分子量17,24kDのタンパク質が、明条件下では、分子量17,20kDのタンパク質がそれぞれ^<32>Pでラベルされた。
|