研究概要 |
ディ-ゼル機関はきわめて高い熱効率をもち現代社会に欠かすことはできない原動機であるが,排出される微粒子(黒煙ならびに青白煙)および窒素酸化物は環境保全上憂慮されており,緊急にそれらの低減を図らねばならない。この種の機関では高温の圧縮空気中に液体燃料を噴射し,周囲空気と混合しつつ燃焼が進行するが,燃焼に許される時間がきわめて短いため,不完全燃焼に陥って微粒子が生成されやすい.そのため噴射圧力を格段に高め,噴霧内での混合と燃焼を迅速にして排出微粒子の低減を図る方法が望まれている.しかし,通常のジャ-クポンプによる噴射では燃焼の内部リ-クや異常噴射発生などのため高圧化はむずかしく,また,断面積の違いを使って圧力を高める増圧ピストン方式やプランジャとノズルを一体にしたユニットインジェクタ方式などの新方式も内部リ-クやコストの点で困難がある.本研究では,これらの欠点を除くため流体の慣性を利用する新しい形式の噴射方法を考案した.この方法は管路入口を太く先端に行くにしたがって細くなる縮小管を使うことを特徴とするもので,管路入口の機械インピ-ダンスを低く保つことによってプランジャの加速を容易にし,先端において高い油圧を発生させる.すなわち,流体の慣性を利用しポンプ側の圧力上昇を先端で大幅に拡大する.本研究では,まず縮小管の圧力増大効果について特性曲線法により詳しく検討し,噴射の高圧化に役立つ可能性を示した.ついで,縮小管内の燃料を加速するポンプとして自由ピストン型の可動部分をもつ2形式を考案した.いずれも可動部に働く力を油圧で釣り合わせておき,少量の油を電磁制御弁によって逃がすことによって起動させる.この噴射システムの動特性を計算機シミュレ-ションによって詳細に調べ,この噴射装置は従来よりも優れた特性をもっており,実用化の可能性があることを明らかにした.
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