研究概要 |
平成1年から平成3年までの研究で得られた主な結果 (1).細菌自動分類のためのハ-ドウェアシステムを開発した。 (a)細菌計測に適したフロ-チャンバ-を含む光学系を製作した (b)TVカメラ,画像メモリ,コンピュ-タ(LUNA37D)よりなる画像処理のハ-ドウェアを製作した。 (2).細菌を収集し,この前処理技術を開発した。 長径,短径の異なる様々な桿菌,並びに双球菌,ブドウ球菌,連鎖球菌など様々な形態学的特徴を持った球菌の形態学的情報を上に述べたシステムを用いて分析し,整理した。 (3).細菌の識別,分類アルゴリズムを開発した。 〔1〕細菌の円形性を表す特徴量としては (a)細菌の面積と周囲長より定義される円形度, (b)細菌の面積と細菌の外接長方形の長径を直径とする円の面積の比, (c)細菌に外接する長方形の長径の長さと短径の長さの比で定義されるアスペクト比 〔2〕細菌の輪郭線の変化の度合いを表す特徴量として定義される凸係数 〔3〕桿菌と球菌を細分するための特徴量として (a)桿菌の長さ (b)球菌の直径 である。 これによれば (a)桿菌,単球菌,双球菌,球菌の識別ができる。 (b)球菌を連鎖状球菌,並びにブドウ状球菌に細分類できる。 (c)菌のサイズ(長径,短径)の測定ができる。 (d)菌液中の細菌の総数を画像処理的に推定できる。 (4).細菌画像の画像処理,並びにパタ-ン認識のためのソフトウェアが完成した。 (a)撮像された画像から細菌を推定できるソフトウェア作成した。 (b)赤血球などの細菌以外のものが混入している場合でも,細菌だけ抽出して処理するソフトウェアを作成した。 (5)細菌浮遊液に血清蛋白やその他の生体成分を加えて,細菌の自動識別を試みたところ,生理食塩水の場合と同じように細菌の同定(桿菌,球菌の識別)が可能であった。このことから,このシステムが臨床検査に十分適用できることが示された。 (6)細菌浮遊液に赤血球,白血球,血小板などの血球成分を混在させても,自動識所による細菌の同定に影響を及ぼさなかった。このことは,臨床検体中の血球成分を前処理することなく直接このシステムで計測できることが示された。 (7)取扱が危険な病原微生物を含む臨床検査の減菌方法として,10%ホルマリンを添加することで完全に無菌化することが可能であり,またシステム装置に障害を与えることなく,細菌の同定にもなんらの影響を及ぼさないことが明らかになった。この10%ホルマリンの添加法は,臨床検体の取扱を安全なものにする一方,刺激臭があることが弱点である。このため,システム装置の消毒には70%アルコ-ルの使用が適当であると考えられた。
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