研究概要 |
線形座屈解析を折れ板ウェブを有する桁構造に適用した結果,せん断に対しては折れ角20度まで強度の増加は期待できないが,曲げについては15度,圧縮に対しては5度程度とすれば充分な強度の増加が期待できることが判明した.アクリル材を用いた実桁構造による実験的研究からも浅い折れ角を有する折れ板構造ウェブの強度増加を追認し,後座屈挙動からこの折れ板構造形式が静的に安定であることを確認した.また,この折れ板構造ウェブに対して終局曲げ強度解析を実施し,折れ角10度から終局強度の増加を確認し,さらに強度増加を示す力学的意味を明らかにした.またに,曲げ耐力は縦横比・幅厚比が変化しても安定していることが判明した. 桁構造の強度設計として,曲げについては座屈後の静的安定性をも考慮してウェブ折れ角を15度程度とすれば,水平補剛材と同等の強度が期待でき,材料の降伏応力度に応じた幅厚比制限値を設けるという形で設計指針が提示できる.圧縮に対しては折れ角5度程度で局部座屈へ移行することによる強度増加が判明し,部分パネルの圧縮強度設計という形でこれまでの設計とも整合できる.しかし,アクリル材を用いた実験のみでは鋼折れ板構造桁の具体的な設計指針を提示するには至らず,鋼材料を用いた実証的研究による確認の必要性が示唆される. 最後に,折れ板構造製作面での問題点を検討した.実際の折れ加工では一般に理想的な折れ角は製作できず,曲率半径の許容範囲が設定される.また,充分な塑性加工の不足による折れ角の戻りのため,折れ角が小さければより小さな曲率が必要になると予想される.よって,鋼種と板厚を勘案して加工中に割れない程度の曲率を設定すべきである.ただし角型鋼管での実績より,加工は充分可能であると思われる.また,板曲げの塑性加工に伴う残留応力あるいは波及効果としての板面内方向の残留応力の影響についても注意を払う必要がある.
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