研究概要 |
高周波誘導炉は金属融体を対象とした基礎研究に広く利用されているが,金属融体の温度が一定の条件でその攪拌強度を広範に変化させるこができない。この制約が冶金反応の速度論的研究の重大な障害となっている。そこで本研究では既存の高周波誘導炉に広範な攪拌制御の機能を付与する新しい2つの方法を提案した。これらの方法による攪拌制御特性を実験的,理論的に検討した。 1.導電性リングによる攪拌制御 (1)方法:るつぼと加熱コイルとの間にグラファイト製又はモリブデン製のリングを置き,それにより溶鉄に浸透し攪拌力を与える磁束の一部を吸収せしめる。磁束の吸収の程度はリング形状によって決まるみかけの比抵抗により制御する。 (2)実験:炉内の磁束密度の測定と溶鉄へのグラファイト丸棒の溶解実験を行った。磁束密度および局所物質移動係数の分布はリングの比抵抗により著しく変化し,リングによる攪拌制御が可能なことが示された。本法の実用化のためには,リングと外部可変抵抗器とを接続することが望まれたが,現状では困難であることが指摘された。 2.2次コイルによる攪拌制御 (1)方法:巻数可変の外部コイルに接続した水冷銅コイル(2次コイル)をるつぼ外部の溶鉄自由表面近傍に置き,2次コイル近傍の磁束密度を外部コイル巻数の変化によって制御する。 (2)実験:上記と同様の実験により本法の実用性が実験的に示された。 3.理論的研究:相互インダクタンスモデルを炉内電磁場の解析に適用した。磁束密度の計算値は実測値と一致した。次にナビエ・スト-クスの式と溶鉄中炭素の保存の式とを解き,溶鉄の流れと物質移動を解析した。得られた結果は2次コイルによる攪拌制御法の可能性を支持した。
|