研究概要 |
Na_2OーB_2O_3系フラックスを用いて,鉄鉱石中の不純物をフラックス浸出法(850〜950^OC)または再結晶法(1400〜1450^OC)により除去する実験を行った。フラックス浸出法で除去されるのは遊離および鉱石表面の不純物であった。再結晶法はさらに鉱石内部に存在する介在物の除去にも有効であった。850〜1450^OCの温度範囲において,温度上昇に伴ってSi,Al,Ca,Mg,MnおよびVの各濃度が減少した。この傾向は,温度上昇に伴う鉄鉱石の細粒化と凝固過程での晶出酸化鉄の割合の増加によって説明された。 再結晶法によるαーFe_2O_3の高純度化における不純物の挙動を理解するためには,αーFe_2O_3結晶とNa_2OーB_2O_3フラックスの間の微量元素の分配係数に関する知識が不可欠であることがわかった。そこで,αーFe_2O_3結晶とフラックスの間のMn,AlおよびTiの分配係数を温度およびフラックス組成の関数として求めた。その際,αーFe_2O_3結晶の成長は,Fe_2O_3微粒子の凝集ではなく,Ostwald熟成機構によることがわかった。結晶成長において,Mn,AlおよびTiはαーFe_2O_3表面に平衡濃度を保ちながら取込まれることが明らかになった。また,これら元素の結晶中での拡散は,本実験では認められなかった。1000^OCにおけるαーFe_2O_3結晶ーNa_2O・2B_2O_3フラックス間のMn,AlおよびTiの分配係数はそれぞれ0.8,0.02および1であった。分配係数の温度依存性は,Mnについては負であったが,AlおよびTiについては正であった。MnはαーFe_2O_3結晶中でMn^<3+>として存在した。また,フラックス中でFeとMnはそれぞれFe^<3+>およびMn^<2+>として存在した。
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