研究概要 |
Tiーrich組成の金属間化合物 TiAlは,新しい軽量耐熱材料として注目されているが,常温延性が乏しいため,未だ実用化されるには至っていない。TiAlの組成域は主としてAl側に広がっているため,Tiーrich組成のTiAlは,TiAl相とTi_3Al相からなる層状組織を持っている。我々は,この層状組織の形成過程を制御することによって,単一の層状組織方位を持つ結晶を育成し,TiAlの実用化をはかるために,一軸変形,冷間圧延に関する実験を行った。得られた成果は以下の通りである。 (1) 降伏応力は層状組織方位に著しく依存する。すなわち,荷重軸が層状組織に平行または垂直であれば高く,傾斜していれば低い。 (2)前者の場合,せん断変形が層状組織を横切るように伝播し(hard modeの変形),後者の場合,せん断変形が層状組織に沿って伝播する(easy modeの変形)。 (3)一軸引張軸が層状組織に対して51゚傾きを持っている試料について,今までの常識をはるかに越える約20%の引張延性を観測した。 (4)二相層状組織を構成するTiAlの変形は,{111}〈112〕タイプの双晶と〈110〕すべりによって起こる。降伏応力および変形挙動について引張一圧縮荷重モ-ド異方性は認められなかった。 (5)制御された層状組織を持ったTiAlの場合,容易変形モ-ドを活用できるように層状組織の方位を選べば,50%程度の冷間圧延が可能である。 (6)冷間圧延したTiAlを焼鈍すれば,硬度の回復が2段階にわたって起こる。 (7)冷間圧延材の再結晶挙動は,圧延圧下率によって変わるが,圧下率が20%以下であれば,層状組織を保存したまま再結晶させることができる。すなわち圧延一中間焼鈍の組み合わせにより50%を越える圧延が可能である。
|