研究概要 |
酸化物分散強化合金の拡散接合技術の開発を目的とし,昨年度は,鉄基の酸化物分散強化合金であるMA956合金(Feー19%Crー4.5%Alー0.5%Y_2O_3)に対して液相拡散接合法を適用するため,インサ-トメタル開発を行ない接合現象並びに接合継手の機械的性質の検討を行なった。また,今年度は,Ni基の酸化物分散強化合金であるMA754合金(Niー20%Crー0.6%Y_2O_3)及び純Niについて,表面ろう材化した母材を用い液相拡散接合を行ない,接合現象,接合欠陥の生成状況などの検討を行なった。表面ろう材化方法としてイオンプレ-ティング装置を用い,ボロン(B)及びNiー4%B合金の簿膜を母材表面に合金化した。得られた結果を以下のように要約する。 (1)MA956合金に7%Si及び1%Bを複合添加した融点1416Kのインサ-トメタル(IMー7)を開発し,これを用いて液相拡散接合を行なった結果,接合欠陥のない接合継手が得られた。 (2)IMー7を用いた接合継手においては,接合温度1503及び1563Kで,接合時間2.16ksにおいて等温凝固は終了し,母材中の合金元素及び濃度はほぼ均一化し,また母材及び接合層間での硬さ分布もほぼ均一化した。 (3)1563Kx2.16ksの接合条件で接合した接合継手の引張試験では,923Kにおいて母材破断したが,室温では引張強さは,母材並みであるものの,延性が極めて低いことがわかった。 (4)B蒸着では,基板温度573K,バイアス電圧ー200V,ガス圧66.7mPaの蒸着条件の場合に,均一で密着性のよい膜が得られた。また,この条件でNiー4%を蒸着したところ,同様に良好な蒸着膜が得られた。 (5)蒸着膜厚0.3μmのB蒸着材の接合では,3μmの幅の液相が生じ,これは1473Kで極めて短時間で消減した。 (6)NiのB蒸着材の接合では,接合圧力の増加にともないボイド率が減少し,中でも蒸着膜厚0.2μmのB蒸着材は接合温度1473K,接合圧力5MPa,保特温度600sの接合条件で組織的に最も良好な接合継手が得られた。 (7)MA754のB蒸着材の接合では,著しいボイドが生じ,接合圧力を増加させてもほとんど消減しなかった。
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