| 研究概要 |
アンチ頭ー頭クマリン二量体からの光学活性ポリアミド側鎖のカルバモイル化は,各種イソシアナ-トとの反応により高収率,高転換率で行うことができた。得られた光学活性ポリアミドをシリカゲルコ-トしてHPLC用カラムを調製しそれらのキラル識別能を調ベたところ,カルバモイル化ポリアミドは,無修飾ポリアミドでは分割できなかったラセミ体を分割でき,両ポリアミドのキラル識別能は相補的であることが分った。
アンチ頭ー頭クマリン二量体とα,ωーアルカンジアミンから得られる光学活性ポリアミドのキラル識別能は,ジアミンのメチレン鎖に対して偶奇依存性があった。この要因を解明するためX線回析,DSCを詳細に検討したところ,シリカゲル表面で結晶性が認められるメチレン鎖が偶数のポリアミドのみにキラル識別能が発現し,しかも結晶化度が高ければ高い程クラル識別能が向上することが明らかとなった。本結果は,キラル識別能/結晶性/偶奇効果の関連を明確にした最初の例である。
アンチ頭ー頭クマリン二量体からポリアミドはアルカリ水溶液に安定であるのに対し,アンチ頭ー頭ウンベリフェロン二量体からのポリアミドは,アルカリ水溶液中でその粘度が急激に低下した。その原因は,キノイド体を経由する主鎖の切断であることを明らかにした。
光学活性ポリアミドを合成するため,アンチ頭ー頭ウンベリフェロン二量体の光学分割法を確立した。次で,これと各種ジアミンとの開環重付加反応を試みたところ,反応は極めて円滑に進行し対応する光学活性ポリアミドが得られ,それらのうち幾つかは溶液中あるいはフィルム状態で高次構造を形成していることが分った。しかし,残念ながらキラル識別能はほとんど発現しなかった。これは,7位の水酸基による強い水素結合の結果と思われる。
|
