研究概要 |
これまで多大な時間と労力,大きな施設を要し,測定が著しく困難であった圃場に生育する作物の根群をファイバ-スコ-プを用いたミニリゾトロン法で簡易に測定する装置を作成し、測定精度と実用性の検討を行った. 1.圃場に埋設した直径60mmの透明の管の壁面に現われる根を視野角120゚のレンズのファイバ-スコ-プ(レンズと管の壁面との距離は22.5mm)を通して携帯用ビデオに録画し,実験室で再生して根長をライン交差法で測定するという装置を作成した. 2.本装置の測定精度の検討を行ったところ,(1)本装置は管の壁面にはりつけた針金,ダイズのすべての分枝根の長さを正確に測定でき,土壌に生育するダイズでも管壁に現われたすべての分枝根の長さを高い精度で測定できる;(2)圃場に埋設した管のダイズの根の伸長方向に及ぼう影響は小さく,コアサンプリング法で測定した根長密度と本装置で測定した根長との間には密接な関係がある;ことがわかった. 3.本装置を用いて圃場に生育するダイズの根群を測定したところ,(1)低土壌水分条件に生育したダイズは湿潤土壌に生育したダイズに比較して,地上部の生育は劣ったが,根は土壌の深い層まで伸長し,また多くの土壌層で根長が大きい;(2)本装置によって根長が大きく根群がよく発達していることが明らかとなったダイズは,根長が小さく根群の発達の劣るダイズに比較して,低土壌水分条件下で土壌水分の吸収量が多く,日中の葉の木部の水ポテンシャルが高く維持され,拡散伝導度,光合成速度の日中低下が小さく,葉の老化の進行が遅い;ことがわかった.以上の結果から,本装置によって圃場におけるダイズの根群の発達の実態をかなり高い精度で,そして従来の方法に比較してはるかに簡易に測定でき,実用性も高いことがわかった.
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