研究概要 |
これまで東南アジアと南米産の7種のハリナシバチの比較研究を通じて,南米産のカベハリナシバチNannotrigona testaceicornisがハウスイチゴの最適ポリネ-タ-と判断し,実用化に向けてマネ-ジメントを図った.マネ-ジメントに不可欠な1)コロニ-の発達と分割,2)花選択性,3)イチゴでの受粉能力とその効果,4)齢差分業,5)人工餌の作製とその給餌法の開発などを重点的に究明した.1)〜5)に関する結果の要約は次の通りである.1)コロニ-の分割は冬期を除き,全シ-ズン中可能であった.コロニ-の再生の最小単位は,女王とワ-カ-50匹と判断された.また,成熟コロニ-(2〜3千匹のワ-カ-)にまで再生するのに,2〜3ヶ月要した.2)個体レベルでは狭食性で,コロニ-レベルでは広食性であった.これは,majoringとminoringの2つの戦略によって花選択が決定されることを示す.花選択の基準として,花粉粒のサイズが重要な要因の1つであることを明らかにした.糖濃度の選択性も明確で,吸蜜効率を最大にするために吸蜜時間が決定された.3)イチゴの柱頭への接触は,花粉採餌蜂において高かったが,(80%),花蜜採餌蜂では低かった(24%).4回以上の連続訪花によって正常果が生産された.34m^2の実験区では,1群(ワ-カ-数約1,000匹)で最適放飼数と断定された.4)ワ-カ-の寿命は2〜64日(平均33.6±11.6日)であった.日齢に伴い作業推移がみられた.内役の場所は,育房域→貯臓つぼ域→巣口へと拡大し,最終的に外役に従事した.外役に従事した個体数はわずか40%に過ぎなかった.5)花粉フィ-ダ-は実用的ではなかった.誘引性をもつ人工花の開発が必要とされた.冬期中,巣内にミツバチ貯蔵花粉挿入で,女王の日当り産卵数を低下させることなく飼養できた.入手しやすく安価な人工花粉の開発が望ましい.
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