研究概要 |
フェニルケトン尿症等,芳香族アミノ酸摂取を必要最小限としなければならない症状の治療のために,タンパク質をオゾン酸化して芳香族アミノ酸残基を酸化分解する方法を開発したが,その過程でオゾン酸化により生ずるオゾニドを酸化的に分解するために過酸化水素水を添加していた。一方,オゾンは水溶液中で過酸化水素を発生することから,上記の過程の必要性について検討した。その結果,従来通りの方法で調製したものと,過酸化水素水添加の過程を省いて調製したものは物理化学的性質,ラット飼育実験の成績が同一であったことから,オゾン酸化後の過酸化水素水添加とそれに続く透析の操作は不要であることが判明した。オゾン酸化カゼイン(OC)は原料カゼインに比べ消化率は劣るが,生物価,タンパク効率は同等である。臓器の内,肝臓,腎臓にカゼイン食群に比べ有意な肥大が認められる。肝臓肥大はスレオニンインバランスによる脂質の蓄積によるものだが,腎臓の肥大については原因は明らかになっていない。一方,OC摂取ラットの尿のアミの酸クロマトグラム上には,カゼイン摂取群には見られない2種のニンヒドリン反応陽性物質(UNー1,ー2,共にOD_<440nm>〉OD_<570nm>)が存在し,多量含まれるUNー1はβーアスパルチル尿素(βーAU)と同定された。この化合物はOCのプロナ-ゼ反応液中に存在すること,チロシン8M尿素溶液にオゾン通気すると生ずるが,チロシン水溶液,アスパラギン酸8M尿素溶液にオゾン通気しても生成しないことから,カゼインの8M尿素溶液中オゾン酸化の際芳香族アミノ酸残基より生成するものであることが判明した。尿中のβーAU量は比較的高く(体内で分解されないとして,摂取OCの約1%,摂取アスパラギン酸の約7%),又,水に極めて難溶性であることと合わせ,上記のOCの消化率の低さ,腎臓の肥大の関与している可能性もあると考え,OC中のβーAU残基の酸加水分解を試みた。OCをアスパラギンを分解する条件(0.05N塩酸,100℃,1ー1.5時間)処理したものでラットを飼育したが,尿中のβーAU量は殆ど減少しておらず,この方法でOCのβーAU残基を分解することは困難なことが判った。βーAU残基を含まないOCを調製するためには,カゼインを尿素を用いず可溶化するか,微粉化して固体のままオゾン酸化する方法が考えられるが,今回は予備実験として,ナトリウムカゼインを水溶液中でオゾン酸化することによりOCを調製することができることを確認した。微量成分のUNー2は4ーレチルプロリン(ラセミ体)と同定されたが,その由来は不明である。
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