研究概要 |
歯科インプラントのための新しい顎骨診断システムを開発するため,まず,パノラマX線写真およびCT画像を再現性良く規格的に撮影する方法を考察し,その再現性の精度について検討を行った。その結果パノラマX線写真では計測値の標準偏差の平均が横方向で0.29mm,縦方向で0.44mmで口腔内法X線規格撮影法に匹敵する高い再現性を得た。また,CT画像では計測点間距離の標準偏差の平均が0.37〜0.64と従来試みられてきた規格CT撮影と比べて同等以上の再現性が確認された。今後は我々の考案した方法に従い,パノラマX線写真およびCT画像を得ることで,CTの骨密度に関する情報とパノラマX線写真の濃度情報との定量的関係を明確にすることができ,新しい顎骨診断システムを確立できる可能性を示唆できた。次いで,この方法によりインプラント患者の顎骨診断を行い,さらに,手術により得られた骨生検標本との対比を試みた。得られたCT値と生検の組織像および形態計測学的デ-タとはよく対応し,さらに,骨切削時の臨床的骨の硬さともよく一致した。また,インプラント患者の顎口腔機能評価から,インプラント上部構造物を装着した後には,スム-スな顎運動と顎機能が向上することが明らかとなった。また,この機能の向上は,よく顎骨診断と一致した。これらの結果から,我々の考案した方法に従ってパノラマX線およびCT画像を得ることで,CTの骨密度の関する情報とパノラマX線写真情報との客観的関係を明確にすることが可能となり,これらのデ-タを集積することにより,広く臨床家が用いることのできるインプラントの顎骨診断システムを構築できることが示唆された。
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