研究概要 |
本研究は,1988年の9月に,わが国で世界に魁けて企画されたマイクロマシン・プロジェクトの,一つの成果である.1989年に本研究が開始されて以来,このプロジェクトでは一貫して,マイクロマシン研究の場の形成と,そこで作られる微小な機械の概念設計と,加工法のあるべき姿と,生体に利用される適用法,といった具体的な目標をかかげて研究を行なってきた.最終設計目標は,末梢血管内で自走する計測・治療装置であるが,その寸法は,直径1mm以下の機械となるため,従来の加工手法では試作すらも困難であり,まず,加工法の確立が必要となった.シリコンプロセスで使用される化学蒸着装置(CVD)や,リソグラフィのための反応性イオンエッチング装置(RIE)を中心に,そのために必要な装置を集め,マイクロマシン・ラボの基斡システムを形成した.現在は2インチ・シリコン・ウエハを取扱うシステムが,条件出しを終え,実働状態に入り,集積化アクチュエ-タの試作が開始されている.同時に,3次元の空間で微小な機械を組立るシステムが必要となるが,生物系でよく使用されるマイクロマニピュレ-タが使用開始され,将来のサブミクロンの加工機械のスケ-ルモデルとして,3軸のモデリング装置が導入され,微小部品の加工(超小型の人工心臓弁など)や組立が開始されている.血管内で計測・治療を行なう系としては,まず,他のプロジェクトで開発が進められている,レ-ザ-血管形成術に使用される微小口径の内視鏡が使用され,その中に仕込んで末梢血管に到達する,有索の移動船の設計が行なわれた.研究の経過で次第に蓄積された知識から,このような微小な領域で作動させる機械には,従来のアクチュエ-タと全く原理の異なる,内部の場のエネルギ-を使用するアクチュエ-タが必要であることが判明し,振動のエネルギ-を利用するマイクロ・アクチュエ-タの基礎研究と開発試作が行なわれた.
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