研究概要 |
各研究分担者が専門性を活かして協力し,以下に示す成果を挙げた。1.澤渡と八木はセルロ-スを温和な条件で機能化する方法を開発し職務発明として特許を申請した。この方法では,セルロ-スをアリル化した後2,3ージブロモプロピルセルロ-スに変換,この物質とアミノ基をもつリガンド分子(各種アミン,生体物質等)を37℃で混合し,セルロ-スに容易に各種アミンを導入できる。調製した誘導体には3ーヘキシルアミノ,3ー(6ーアミノヘキシルアミノ),3ー(4ースルファニリノ)ー2ーブロモプロヒルーセルロ-ス,シトクロムC_3ーセルロ-ス等がある。常温で結合しないチオ-ルは高温で共有結合した。得られた誘導体は微生物セルラ-ゼに対する抵抗性,銅イオンに対する選択的吸着性,大容量のイオン交換性,イオン性色素の吸着性をもち,シトクロムC_3ーセルロ-スはヒドロゲナ-ゼに対する電子キャリア-活性を保持していた。2.澤渡は,この他,セルロ-ス機能化のさいのI型からII型への変換のさいの結晶化度,分子鎖配向性,結晶弾性率等の変化も調べた。3.鈴木は紙に加工されたセルロ-スの強度特性を向上するため部分アミノ化ポリアクリルアミドとポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン樹脂を添加した各種クラフトパルプハンドシ-トの諸特性におよぼすγ線照射の影響を検討した。4.岡田は黴,菌類や細菌セルロ-スの生産,セルロ-スからのセロオリゴサッカライドの生産性に関する研究を行った。セルラ-ゼの研究ではβーグルコンダ-ゼを利用したゲンチオオリゴ糖(βー1,6ー結合をもつセルロ-ス類似体)の生産と機能性食品としての応用の道を開いた。5.板垣は蛍光寿命測定等の光物理的手法を用いてマ-セル化セルロ-スのグルコ-ス単位が硫酸中では脱水され,発光性芳香環となることを発見し,溶液中のセルロ-ス鎖の分子運動に関する知見を得た。
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