配分額 *注記 |
28,100千円 (直接経費: 28,100千円)
1991年度: 9,300千円 (直接経費: 9,300千円)
1990年度: 9,300千円 (直接経費: 9,300千円)
1989年度: 9,500千円 (直接経費: 9,500千円)
|
研究概要 |
筆者らが発見したミトコンドリア内膜の片方側からのみエネルギ-変換を阻害する異方性阻害剤について,マウス白血病由来細胞(P388)及びマウス肉種由来細胞(Sarcoma 180)の細胞増殖に対する制癌剤薬効評価試験結果を行ったところ,TZー1ー8を除いていずれの異方性阻害剤(20種)もP388とS180の細胞増殖を顕著に抑制した. 2.in vitroでの制癌剤薬効評価試験で有効性が認められた異方性阻害剤についてin vivoでの制癌剤薬効評価試験を行なったところ,抗P388試験では,薬効は認められなかったが,抗Sarcoma180試験では,TZ3ー4とTZ3ー13が顕著な抑制効果を示し,腫瘍退縮が認められた. 3.ヌ-ドマウスに移植増殖させたヒト乳癌MXー1からのミトコンドリア単離法を開発し,インタクトネスを保持したミトコンドリアの単離に成功した. 4.最近,制癌剤として多用されているシスプラチン(CDDP)が,ヒト乳癌MXー1から単離したミトコンドリアのグルタミン酸(+リンゴ酸)の呼吸活性を直接阻害し,その濃度作用曲線は,シグモイドカ-ブを描き,アロステリック阻害であることが示唆された.しかしながら,コハク酸を基質とした呼吸活性にはほとんど影響しないことが明かとなった.従って,CDDPの作用部位は,NADHーCoQ還元酵素レベルと推測される.ところが,CDDPは,正常のラット肝ミトコンドリアの呼吸活性に対しては極く僅かしか阻害しないこと,そしてラット心筋ミトコンドリアの呼吸活性に対しては全く影響しないことが解かった.従って,ヒト乳癌MXー1のミトコンドリアの呼吸鎖の一部(恐らくNADHーCoQ還元酵素)のCDDPに対する感受性が,正常組識のミトコンドリアのそれに比較して,著しく高いという重要な結論が得られる.今回の発見は,CDDPが,ヒト乳癌のミトコンドリアの呼吸活性に対して選択的に阻害作用を示し,正常な組織のミトコンドリアの呼吸活性に対してはほとんど阻害作用がないことを意味し,ヒト乳癌のミトコンドリアに対して"真の選択毒性"を持っているという重要な結論に達する.
|