研究概要 |
今年度は最終年度であることもあり、データのとりまとめを中心に行った。 具体的にはβ-(BEDT-TTF)_2PF_6に関する追加実験、詳細なデータ解析を行い、論文をPhys.Rev.Bに投稿した。(現在印刷中)この物質は低温で、電荷分離を起こすことが知られていたが、分光測定により、電荷分離の程度を決定することができた。またこれまでよく理解できなかった、赤外領域の光学伝導度スペクトルの形状が、電荷分離を考慮すると極めてよく説明できることを明らかにした。ちなみにこの研究に関する予備的な研究成果に関しては、業績1にすでに報告している。 また、β'-(BEDT-TTF)_3(ACl_4)_2 (A=Zn, Zn_<2-x>Ga_x)に関しては、Raman分光、赤外反射スペクトルの測定を行い、データのとりまとめを行った。この物質に関する研究は、物質合成を行ったグループと共同で行っているが、われわれの実験結果は明らかにZn->Gaの置換によって、キャリアは連続的に増えていないことを示しており、その点で合成を行ったグループとの間に意見の不一致がある。この点をいかに解決して、論文にするかを現在考慮しているところである。 これらの実験と平行して、磁場中の赤外反射分光、遠赤外領域の分光測定の予備実験を行った。前者に関しては、再度実験を行ってから論文を取りまとめる。また後者に関しては、外国人特別研究員が帰国した現時点で、装置の調整を行っている。
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