DNAマイクロアレイを用いた遺伝子発現プロファイルの解析は、糖尿病などの多因子遺伝子疾患の原因究明に非常に有用な方法である。本研究の目的は膵β細胞特異的マイクロアレイを作製し、発現プロファイルをDNAマイクロアレイ解析することにより、糖尿病の遺伝素因を網羅的に解明することである。昨年度我々はマウスの膵島より極めて高品質なcDNAライブラリーを作製し、このライブラリーを用い、各サイズフラクションのクロンのシークエンス解析を行なった。その結果、現在までに8000種類の独立クローンが同定され、このcDNAライブラリー由来の膵β細胞特異的ESTデーターベースはほぼ完成した。今年度はこのクローンをナイロンメンブランに点着させたcDNAメンブランアレイの作製を行ない、マイクロアレイ解析のシステムを樹立した。基礎検討として、シグナル強度の再現性や、シグナルの特異性が確認された。現在我々はマウス胎児膵島より多分化能を有する前駆細胞を含む細胞集団を単離し、本cDNAメンブランアレイを用いて、前駆細胞における膵臓の分化・発生にかかわる転写因子、遺伝子発現の調節メカニズムを解析中である。本cDNAデーターベースとマイクロアレイは膵β細胞の分化・再生や、膵β細胞からのインスリン分泌機構を解析する上で非常に有用なツールとなると期待される。
|