研究概要 |
本年度は以下の3点について実験を行った。 1.金属内包フラーレン内包ピーポッドのトンネル顕微鏡観察 金属内包フラーレンM@C_<82>(M=Ce,Gd)内包ピーポッドを超音波処理によりN,Nジメチルホルムアミド中に懸濁させ、スピンコーティングを用いて金(111)及びHOPG基板上に塗布した。大気中STM、タッピングモードAFM、SEMを用いて観察を試みた。これらの結果から、殆どのピーポッドはバンドル状となり、観察に適した一本の孤立したピーポッドを見出すことは困難であった。また、STM実験では、多くの場合、プローブ走査によりピーポッドが動き、測定は困難であった。現在、試料の濃度、基板の条件を調べ、最適な試料の条件を明らかにする努力をしている。試料が移動してしまうことに関しては、極低温でのSTM実験により、改善を試みている。 2.アルカンチオール自己集積化膜によりコートされた白金ナノ粒子のトンネル顕微鏡観察 アルカンチオールCnH_<2n+1>SH(n=6,10,18)でコ-トされた白金ナノ粒子の大気中でのトンネル顕微鏡観察を行った。この結果、n=6につては、約1-2.6nmのナノ粒子が観測された。この結果はx線解析、透過電子顕微鏡観察の結果とも対応するものである。また、サイズの小さいナノ粒子についてはバイアス電圧の変化により、見かけの粒子サイズが変化することが見出された。このことには、小さなナノ粒子の場合、表面をコートしているアルカンチオール層と中心白金ナノ粒子との間の電荷移動が効いているものである可能性がある。白金ナノ粒子についても、極低温でのSTM観察、及び電子状態解明のため、トンネルスペクトル解析を準備している。 3.アゾベンゼン分子の光異性化過程のトンネル顕微鏡による観察 アゾベンゼンは、光照射によりシスートランスの構造異性化が起こる。超高真空中で金(111)基板上ヘアゾベンゼン単分子層を作成し、シスートランス構造異性化をSTMにより解明することを試みた。今年度は試料作成を試み、試行錯誤を進めている。
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