研究概要 |
重イオンビーム慣性核融合における高エネルギー密度状態の生成を目指して、1 複数の重イオンビームを重畳させたときのターゲットヘのビーム輸送とエネルギー付与分布を調べ、2 その分布の高エネルギー密度状態への影響を研究することが、本研究の目的である。高エネルギー密度プラズマの生成は、核融合研究において非常に重要であり、医療応用・物性研究等にも新たな研究領域を開く手段を与える。 昨年度までに以下の点について成果を得た。1、重イオン1粒子の阻止能を計算するコード他を開発。2、重イオン慣性核融合炉内での重イオンビーム輸送に関連し、有効なビーム中和方法を提案した。3、ビーム内粒子分布を考慮し標的へのエネルギー付与分布を計算する解析コードを開発、これらの成果により、標的となる物質に複数本の重イオンビームが照射した際のエネルギー付与分布を求めることができる。1本の重イオンビーム内の粒子エネルギー分布、ビームエミッタンス、収束度など指定することで、現実的なエネルギー付与分布が得られるようになった。 今年度はこのコードを用いて、標的内のエネルギー付与分布とビーム配置等のビームパラメータとの関係を調べた。今年度得られた成果は以下の二つにまとめられる。1,重イオン慣性核融合燃料標的を均一に爆縮させるために必要なビーム照射不均一を実現する方法を見つけたこと。直接照射型の爆縮方式でも、ビーム本数を32本程度以上用いることで均一なビームエネルギー付与が可能であることが示された。2,複数本のイオンビームを任意形状の物質に照射し、そのエネルギー付与分布を計算できるようになった。これにより、生体や材料にイオンビームを照射した際の詳細なエネルギー分布状態がわかり、高エネルギー状態の応用範囲が広がった。 本研究テーマの当初の目的に加えて、上記2のような成果も得られ、本研究は有意義であった。
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