研究課題
特別研究員奨励費
神経前駆細胞の増殖・分化を制御するメカニズムを解明するため、塩基性ヘリックス・ループ・ヘリックス(basic helix-loop-helix;HLH)型転写因子であるHesr(Hes-related)1とHesr2に着目し大脳の発生における機能の解析を行った。Hesr1とHesr2の発現を調べたところ、ともに大脳の脳室周囲層に存在する未分化な神経前駆細胞に発現していた。次にHesr1あるいはHesr2を大脳の脳室周囲層に強制発現させて機能の解析を行った。胎生13日目においてGFPのみを強制発現させたコントロール細胞は皮質板へ遊走し、NeuN陽性のニューロンとなっていた。一方、Hesr1、Hesr2を強制発現させた細胞は、脳室周囲層に留まり未分化に維持された後、Hesrの発現がなくなると皮質板へ遊走してより遅くに分化したニューロンとなっていた。胎生15日目に強制発現させると、コントロールの細胞は外側へ遊走し、NeuN陽性のニューロンへ分化していたが、Hesr1、Hesr2を強制発現させた細胞は脳室周囲層に留まり、GFAP陽性のアストロサイトへ分化していた。また、Hesr1、Hesr2はニューロジェニックなbHLH型転写因子Mash1やMath3の転写活性を抑制した。以上の結果から、Hesr1とHesr2はニューロジェニックなbHLH型転写因子を負に制御し、神経前駆細胞の維持に重要な役割を担っていることが明らかとなった。
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