研究概要 |
サイトカインのシグナル伝達機構はJAK/STAT経路を中心にかなりの理解がすすんでいる。一方シグナルを制御する機構についても関心が寄せられるようになってきた。我々の研究室ではSTAT5の負のフィードバック調節因子であるCIS1, JAKキナーゼの阻害因子であるJABをクローニング、さらにこれらを含むCISファミリーの存在を明らかにしている。現在これらのCIS/JABファミリーの生理機能と病態との関連を明かにすることが重要な課題となっている。特にサイトカインのシグナルを強力に抑制するJAB, CIS3はノックアウトマウスの作成などを通じて生理的にもきわめて重要な役割を果たしていることが明かにされている。我々はノーザンブロッティングやin situ hybridizationによってクローン病、リューマチなどの慢性炎症性疾患でCIS3が高発現していることを見い出した。またCIS3の発現低下が炎症性疾患の進展に関与することを大腸炎モデルで示した。さらにCIS3はTh2細胞に限局して発現しておりTh1ではほとんど発現していないことも明らかにしている。潰瘍性大腸炎やリウマチ性関節においてはいわゆる炎症性サイトカインであるIL-1,IL6,TNFα、IFNΥが高値を示す。これらのうちIL-1やTNFαはNF-kBやJNKの経路を、IL-6はSTAT3、IFNΥはSTAT1を活性化する。我々はこれらの炎症性疾患においてSTAT3の活性化と特にSOCS3/CIS3の高い発現を認めた。我々はSTAT3は炎症の増悪化に、SOCS3/CIS3がその抑制に働くことを示した。またマウス関節炎モデルにCIS3やドミナントネガティブSTAT3 (dnSTAT3)遺伝子をアデノウイルスを用いて導入したところ関節炎が著しく軽減した。ウイルス投与によって組織破壊も抑えられIL-6レベルも減少していた。このことからもCIS3が炎症性疾患において抑制的な作用を持つことが示唆された。
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