研究概要 |
採用二年目の研究に関する報告は、主に以下の二つにまとめることができる。 1.Ge同位体超格子中のラマン散乱における波長依存性の理論的構築^1 Ge同位体超格子を514.5nmと488nmの二つの波長で励起した場合、各モードのラマン散乱強度が相対的に異なることが実験的に示されていた。特に侵入長が短い488nmの光を用いた場合、ラマン不活性と思われるピークが観測されていた。このことは、昨年の報告で伝えたとおりである。これは、波長によって変化する侵入長による効果というのが有力な解釈であった。そこで,今年度の研究では、侵入長が短い光でも使用できるラマン散乱モデルを提案した。ラマン散乱モデルを考えるとき、最も簡便で古くから知られているモデルが、ボンド分極率モデルであるが、我々はこのボンド分極率モデルに侵入長の依存性が考慮できるように修正した。理論と実験の間にはまだ溝があるが,今後この研究は継続して行う。 2.Ge同位体量子ドット中のラマン散乱^2 Ge量子ドットからの散乱光は弱く、その散乱光はSiの鋭い二次のラマン散乱とほとんど同じ周波数に現れるために、その評価法に疑問が持ち上がった。我々は、その疑問に解決を与えるべく、同位体制御されたGe量子ドットを分子線エピタキシー成長し、ラマン分光法によって評価した。同位体効果を用いたことで、^<76>Ge同位体量子ドットのピークとSi基板上からのピークを明確に分離することに成功した。さらに、Ge量子ドットにSiキャップ層を付けたものとそうでないものを比較し、詳細なラマン実験を進めることで、Ge量子ドット中には、Siが混入していること、量子ドットのサイズが小さいほどその効果が大きいことが分かった。逆にドットのサイズが大きなものに関しては、量子ドットの内部にGe組成が集中している部分(コア)が存在することが明らかになった。 [1].K.Morita, K.M. Itoh, M.Nakajima, K.Mizoguchi, Y.Shiraki, and E.E.Haller, in Proceeding of the26^<th> International Conference on Physics of Semiconductors, in Press (2002). [2].A.V.Kolobov, K.Morita, K.M.Itoh, and E.E.Haller, Appl.Phys.Lett.81, 3855 (2002).
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