研究概要 |
本研究では、ペロブスカイト型マンガン酸化物の軌道や電荷自由度の物性への役割に着目し、超音波を用いてLa_<1-x>Sr_xMnO_3(x=0.12,0.125,0.165,0.3),Pr_<1-x>Ca_xMnO_3(x=0.35,0.40,0.50),Nd_<1-x>Sr_xMnO_3(x=0.50,0.55)の弾性定数を行った。e_g軌道が局在傾向にある領域の絶縁体では、四重極子秩序温度より高温領域でMn^<3+>イオンの2重縮退したe_g軌道の四重極子と格子歪みとの結合に起因した弾性定数(C_<11>-C_<12>)/2のソフト化を観測した。このソフト化を四重極子感受率で解析し、四重極子-歪み相互作用の結合定数g_r3=200〜1200K、四重極子相互作用の結合定数g_<r3>'=5〜20Kを決定した。また、CMRの起源解明に重要なヤーン・テラーエネルギーをE_<JT>=10〜60Kと決定した。この値は今まで考えられていたE_<JT>≒6000Kと比べて2桁から3桁小さいこととなる。一方、e_g軌道が遍歴傾向にある領域の金属では軌道自由度に起因する弾性定数のソフト化は観測されなかった。Pr_<1-x>Ca_xMnO_3では電荷揺らぎ(Mn^<3+>:Mn^<4+>=1:1)に起因する(C_<11>-C_<12>)/2とC_<44>のソフト化が観測された。ランダウの相転移理論から電荷揺らぎに起因するC_<44>のソフト化を解明し、さらにC_<44>のソフト化が生じるような低温相での電荷秩序状態を導出した。その結果は中性子散乱等から報告されている電荷秩序と一致した。また、磁場中での弾性定数の奇妙な振る舞いも観測し、現在解析中である。さらに、これらの物質の熱膨張測定を行なっており、Pr_<1-x>Ca_xMnO_3(x=0.40)では電荷秩序に伴う自発歪みε_<xy>=9×10^<-4>を見積もることが出来た。
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