研究課題/領域番号 |
01J07385
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
言語学・音声学
|
研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
阿部 新 東京外国語大学, 外国語学部, 特別研究員(PD)
|
研究期間 (年度) |
2001 – 2002
|
研究課題ステータス |
完了 (2002年度)
|
配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2002年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2001年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
|
キーワード | アクセントの生成と知覚 / コイネー化 / 東京語アクセントの聞き取り / 地元意識 / 方言意識 / よそ者(interloper) / 内部の者(insider) / 社会的野心を持つ者(aspirer) |
研究概要 |
昨年度の研究の結果を学会にて発表した。内容は主にアクセントの生成と知覚についてである。 生成については日本方言研究会で「方言接触地域の名詞アクセント」と題して2002年5月17日に発表した。小笠原に元から住んでいた成人被験者と、新たに移住した成人被験者のアクセント読み上げを分析した結果、コイネー化を起こして互いに似てきていることがわかった。さらに、小笠原で生まれた高校生被験者について音韻的に分析したところ、東京式アクセントに近いことが分かったが、音響的に分析したところ、無アクセントである元からの住民のように読み上げ音声のピッチ幅が狭いことがわかった。 知覚については社会言語科学会で「東京語アクセントの聞き取りに影響を及ぼす地元意識・方言意識」と題して2002年9月21日に発表した。小笠原の中高生に東京語アクセントを聞かせて、正しいアクセントを答えさせたところ、正答率は個人によってかなりの違いあり、出来る人も出来ない人もいることがわかった。その正答率を規定する社会的・心理的要因をアンケート結果から多変量解析した。その結果、正答率を上げる要因は、地元が嫌いで言葉の違いに対してあまりはっきりした意識を持ってなく、東京や地元との関連が少ないという要因、正答率を下げる要因は、言葉の違いに対してはっきりした意識を持ち、地元との関連が多いという要因が関与していることがわかった。 また、さらに、小笠原での結果を東京生まれの話者と比較した結果を学会誌に投稿予定である。比較の結果、東京語話者の正答率も個人によってかなりの違いあり、出来る人も出来ない人もいることがわかった。また、小笠原も首都圏の被験者も、正答率を上げるのは「よそ者(interloper)」であり、下げるのは「内部の者(insider)」であることが分かった。また、都会志向といった「社会的野心を持つ者(aspirer)」が正答率を上げたり下げたりする。しかし、小笠原では正答率を上げる要因を持つ人々が存在しないため、聞き取りが得意な人が少ないということがわかった。そのため、小笠原の正答率が東京よりもやや低いのである。小笠原では、「よそ者」が「よそ者」のままでいることができにくい社会であるということも示しているだろう。 上記以外に、研究を社会に還元する活動を行った。2002年8月29日〜31日にかけて、調査地小笠原諸島父島において、「第2回公開研究会 小笠原諸島の言語・歴史・社会」に出席し、「小笠原の豊かな島言葉:八丈島だけではない、その源」と題して、島民の方々を対象に講演を行った。また、2003年1月には小笠原自然文化研究所発行の季刊誌『i-Bo』6・7合併号に「絶滅の危機に瀕した「固有種」〜小笠原の島言葉〜」と題して寄稿した。
|