研究課題
特別研究員奨励費
生体関連物質が機能発現可能な形態へ到達するための自己組織化機構の解明を目指し、これらに対し本質的であると考えられる、溶質分子の親水性と疎水性のバランス、立体構造、電荷の違いによる多様な物質と水との相互作用の多様性、すなわち疎水性水和、疎水性相互作用、静電相互作用の効果を、(1)マイクロ波及びミリ波領域の誘電分光法による分子やイオンのダイナミクス観測、(2)小角X線散乱を中心とした散乱法を用いた構造決定に加え、(3)動的光散乱、密度・音速の超精密測定等の力学・光学物性を多角的に組み合わせて検討した。(1)水を「生命現象の場」「機能性、選択性の源」と捉え、水素結合性に起因する階層的ダイナミクスの解明を行った。水のマイクロ波及びミリ波領域の超高精度誘電緩和測定を行い、サブTHz分光、赤外吸収の最新の結果と結合して50MHz-18THzのスペクトルから水分子の協同緩和、局所構造の緩和、分子間振動、束縛回転を詳細に議論し、誘電緩和の速い緩和モード(τ〜0.5ps)と光散乱(ラマン)の緩和モードが同じ起源を持つ事などを初めて明らかにした。(2)多様な水素結合液体混合系の系統的な緩和時間の分析から、水素結合アクセプターサイトの数密度と溶質分子内の親水基立体配置の空間相関の強さが、協同緩和(=水素結合ネットワークの組替え)のタイムスケールを決定付けるパラメータであり、水素結合の組換えに伴い、溶質分子の周囲で多数の水素結合を同時に切断する必要がある場合、協同緩和時間は劇的に遅くなることが分かった。(3)生体由来の両親媒性高分子が水中で形成する多様なナノ構造体構造と自己組織化機構に関する研究を親水基鎖長が異なるコレステロール誘導体を着目系として展開した。生体由来の両親媒性高分子が形成する、球状、棒状ミセルや、ラメラ、キュービック、ヘキサゴナル液晶等のナノ構造体の自己組織化機構を、相挙動と複数物性を密接に対応させて検討し、従来、極狭い濃度範囲でのみ現れると考えられていた中間相と言われる特殊な液晶相が広範な濃度領域で安定に存在することを明らかにし、中間相構造の濃摩変化や通常相への転移を詳細に追跡することが出来た。※本研究の遂行のため、2003年8月から約2ヶ月聞、ドイツRegensburg大とオーストリアGraz大に渡航し、海外研究機関の先端的装置を用した測定を行った。
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