研究概要 |
新規3座配位子である1,8-dimethoxy-9-bromoanthraceneを合成し、9-位をリチオ化後、種々の置換基を有するホウ素原子を導入して、エックス線解析によって構造を検討した。種々の誘導体間での比較の結果、ホウ素原子上の置換基の電子求引性が増大すると、1,8-位の酸素原子と9-位のホウ素原子の距離が近くなることが分かり、酸素配位子と中心ホウ素の間に求引的な相互作用があることを確認した。また興味深いことに、ハロゲンを置換基とする場合(BF2, BC12)のX線構造はBF2体では5配位、BC12体では4配位と大きく変わることが明らかになった。この結果についてDFT計算を行ってその原因を解明した。またカテコール誘導体に対して、エックス線による精密電子密度解析を行い、そのAIM解析結果をDFT計算の結果と比較したところ、非常に良い相関を示し、酸素配位子と中心ホウ素の間に求引的な相互作用があることが確認できた。また、1,8-位に窒素原子を有する新規3座配位子である1,8-bis(dimethylamino)-9-bromoanthraceneの合成にも成功し、そのホウ素誘導体およびパラジウム誘導体のエックス線解析に成功した。さらに、1,8-位が酸素アニオンとなりうる新規3座配位子の合成にも成功し、中心に炭素を導入することができた。その炭素誘導体のエックス線解析も行ったが、アニオンと対カチオンとの相互作用のために中心炭素は4配位であることがわかった。
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