研究概要 |
本研究では、触媒反応系全体を分子集合体として捉えた錯体触媒反応を開発することを目指している。すなわち、触媒中心金属、配位子、反応基質、反応生成物などからなる分子集合体の種々の相互作用(配位結合生成能、疎水親水相互作用、ホスト-ゲスト相互作用など)を活かした均一系触媒反応を創出することを目的とする。これにより従来にない三次元的ネットワーク構造を有する、大きく立体的に制御されたナノサイズの触媒環境を創り出すことが可能となり、この特異的な触媒環境を活用した画期的な高活性、高選択的な触媒反応の実現が期待できる。 前年度までに、超分子機能を有する多配位型リン配位子及び極めて嵩高い置換基を有する半球状リン配位子の設計、合成を種々検討してきた。本年度はさらに新規ナノサイズリン配位子の設計合成を行い、それらの触媒反応への適応を検討した。その結果、合成したナノサイズの半球状リン配位子を用いた遷移金属触媒ヒドロシリル化において、著しい反応加速効果を見出した。 中心金属としてロジウムを用い、種々のケトンと3置換シランとの反応を検討したところ、適したナノサイズホスフィンを用いた場合、他の一般的なホスフィン(PPh_3,PEt_3,P(o-tol)_3,P(t-Bu)_3,PCy_3など)に比べ、いずれも極めて速く進行した。例えば、シクロヘキサノンとジメチルフェニルシランとの反応では、他のホスフィンに比べその反応速度は約30倍以上であった。最も基本的なトリアリールホスフィンであるPPh_3と比べると150倍以上の加速効果が見られた。このような加速効果の出現は、ナノサイズの半球状リン配位子の特異な構造により、高活性錯体を効率的に発生さているためであると考えられる。 現在さらに、新規ホスフィン配位子の合成と半球状リン配位子を用いた触媒系の他の反応への適応を検討している。
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