研究概要 |
タバコモザイクウイルス(TMV)の増殖に関与するシロイヌナズナTOM因子(TOM1,TOM2,TOM3)は,アミノ酸配列よりどれも膜タンパク質であることが予測される.これらTOM因子が,植物細胞内のどのオルガネラ膜に存在するかを調べるために,TOM因子とGFPとの融合タンパク質を恒常的に発現する形質転換BY-2(タバコ培養細胞)を作製し,共焦点レーザースキャン顕微鏡で解析した.その結果,TOM1とTOM2は主に液胞膜に局在していた.TOM3は,ゴルジ体あるいは液胞膜に局在する可能性が示された.さらに,イオディキサノール密度勾配遠心法によりオルガネラ膜を分画し,特異的抗体で分析した結果,TOM2は液胞膜画分に検出された.TOM1は,液胞膜画分に最も多く検出され,また小胞体やゴルジ体など様々な膜が混在する画分にも検出されたことから,液胞膜以外の膜にも局在する可能性が示された.TOM3については使用可能な抗体が得られておらず,現在抗体作製中である. TMVゲノムRNAの複製に関わるウイルスタンパク質とTOM因子との共局在性について調べるため,TMV感染細胞を用いた解析を行った.その結果,膜タンパク質でないと考えられるTMV複製タンパク質は,可溶性タンパク質を多く含む可溶性画分に最も多く検出されたが,膜画分にも存在した.膜画分内における分画パターンはTOM1とよく似ていた.さらに,各画分に含まれるTMV RNA合成活性について調べた結果,TOM1が多く含まれる画分には,高いTMV RNA合成活性が見られることが明らかとなった.可溶性画分には複製タンパク質が多く含まれるにもかかわらず,活性は検出されなかった.以上より,少なくともTOM1は,TMV RNA複製複合体の構成因子の一つとして,液胞膜および未同定の膜上に複製複合体をつなぎ止める役割を果たしている可能性が強く示唆された.
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