研究概要 |
本研究の目的は、DNAマイクロアレイによる遺伝子発現量時系列データから、遺伝子間の制御ネットワークを推定する方法、アルゴリズムを開発することである。今年度は、昨年度開発した方法をさらに発展させ、DNAマイクロアレイ時系列データ解析に加え、クロマチン免疫沈降(ChIP)マイクロアレイデータ解析、プロモーター配列解析を組み合わせた新しいアルゴリズムを開発した。具体的には、DNAアレイ時系列データをクラスタリングしてある特定の生命現象に関わると考えられる遺伝子群をスクリーニングし、またChIPアレイデータからある転写因子のターゲットと考えられる遺伝子群をスクリーニングする。そして両方の遺伝子群の集合積を取って、特定の生命現象の元で、ある転写因子のターゲットとなる遺伝子群を直接推定する。さらにその遺伝子群のプロモータ解析を行い、転写因子プロモータ結合モチーフを推定する。今度はその結果を用いて先ほどクラスタリングされた遺伝子群の上流配列を調べ、どの遺伝子が、どの転写因子の組み合わせで、どの結合モチーフを通じて制御されているかを推定する。 このアルゴリズムをコンピュータにインプリメントし、公開されている酵母細胞周期のデータから、遺伝子間制御ネットワークを推定した。その結果、Swi6+Swi4,Swi6+Mbp1,Fkh1/2+Ndd1+Mcm1といった既知の制御系に加え、Stb1+Swi6+Swi4,Stb1+Swi6+Mbp1,Fkh2+Swi6+Swi4,Swi5+Ste12+Dig1といった、多くの新しい遺伝子制御系が推定された。さらに従来の制御系と今回得られた新しい制御系を組み合わせると、酵母の細胞周期において、遺伝子制御ネットワークの活動が、転写因子の組み合わせによってスムーズに連携されているという新しいモデルが示唆された。
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