研究分担者 |
西村 太志 東北大学, 理学部, 学振特別研究員 (40222187)
林 信太郎 秋田大学, 教育学部, 助教授 (90180968)
KAVOTHA K.S. ザイール, C. R. S. N., 研究員
MIFUNDU Wafu ザイール, C. R. S. N., 研究員
NDONTONI Zan ザイール, C. R. S. N., 所長
森田 裕一 東北大学, 理学部, 助手 (30220073)
笠原 稔 北海道大学, 理学部, 助教授 (40001846)
田中 和夫 弘前大学, 理学部, 教授 (40003511)
WAFULA Mifundu C. R. S. N. Lwiro Centre, Zaire, Researcher
ZANA Ndontoni C. R. S. N. Lwiro Centre, Zaire, Directer
WAFULA Mifun ザイール, C. R. S. N., 研究員
ZANA Ndonton ザイール, C. R. S. N., 所長
KAVOTA K.S. C. R. S. N(ザイール), 研究員
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研究概要 |
この研究は,(1)ホットスポット火山の多いアフリカ大陸の深部構造の解明,並びに(2)ニアムラギラ火山のマグマ活動調査の2項目に大きく分けられる.1990年度の現地調査は予定通り実施され,当初の目的は達成された.1991年度は,現地調査の最中の9月23日にザイ-ルの首都キンシャサを中心に政情不安に端を発した暴動が起こり,日本大使館の退避観告に基づき調査を途中で中断し,隣国に緊急避難しそのまま帰国する結果となった.このため,この年度の調査事項の実施については,不完全なものにならざるを得なかった.以下,2年間の研究実績を項目別に分けて簡潔に示す. 1.広帯域地震観測.0.05秒〜370秒に渡って一様な感度を持つCMGー3型とパソコンを用いた地震波収録装置を,1990年度はザイ-ル東部のルイロ地震観測所(LWI)に設置した.1991年度は,キンシャサ効外のビンザ気象局の地下地震計室(BNZ)に設置したが,最後の調整の直前に暴動が起こり,一部未完な状態のまま今日まで観測は続けられている.従って,地震計の再調整を含む良好なデ-タの取得は今後の課題として残された.この観測と並行して実施してきたアフリカ大陸下の深部構造については,(イ)アフリカ直下でコア・マントル境界(CMB)が盛り上がっていること,(ロ)マントル最下部のD"領域ではS波速度が3〜5%遅いこと,逆に,アフリカ大陸の外では数%速いこと,並びに,(ハ)コア表面の温度は,アフリカ大陸を含むA半球がその反対側の太平洋を含むP半球より数10mケルビン高温であること,などが明かとなった.これらの結果はアフリカ大陸に於いてホットスポット火山の密度が高い理由の解釈に重要な手がかりとなる. 2.火山性地震・微動観測.1990年度は,CRSN(ザイ-ル自然科学研究所)の定常観測点(4点)の他に,8月13日〜11月29日まで火山地域内で8点の臨時地震観測を実施した.11月20日にこの地域では過去最大のM4の地震がニイラゴンゴ火山南方10kmに起きた.観測結果はこの地震により火山性地震やマグマ活動は励起されず,逆に地溝帯中軸の地震が活発化した事が明らかにされた.また,ニアムラギラの側噴火(キタツングルワ)のストロンポリ式噴火に伴う地震は火口直下0.2〜0.5kmの深さに集中し,その発震機構はマグマの噴出時に働くほぼ鉛直下方のSingle Fo
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rceであり,その大きさは,10^4〜10^6ニュ-トン(N),震源パルス時間は0.15秒である事が解った.この結果,噴火形式の異なる火山での地震,微動の発生について定量的比較が可能になった.また,微動のスペクトル解析から噴火の終息する直前に微動の卓越周期がステップ的低周波側に変化する事が見いだされ,マグマの噴出過程を知る上で重要な知見が得られた. 3.地殻変動観測.1989年4月のニアムラギラ山頂カルデラ内の割れ目噴火直後の光波測量から1年後の1990年8月に火口8測線を再測し,全測線で15〜36cmの伸びが認められた.この結果は,割れ目噴火に伴うFissureが開口する変形が依然進行している事を示すものである.1991年9月の測量でもこの傾向は確認され,ニアムラギラ火山へのマグマの供給が活発である事が確認された.一方,地溝帯を横断する測線については1990年の結果からは地溝帯拡大について有意なものは見い出せなかった.これら一連の観測より現在マグマの供給はニアムラギラ火口直下に限られている事がより鮮明になった. 4.マグマ活動.ニアムラギラ火山は,最近2年に1度の割合で噴火する.1976ー1989年の8回の噴火に伴う溶岩と1886年の噴火の23日間の溶岩を系統的に採取し,その化学分析を行った.その結果,MgOやK2Oの重量%の時間変化からニアムラギラ溶岩が時間と共によりマフィック(苦鉄質)になっている事が伴った.このことは,ニアムラギラの噴火はマグマ溜まりの上部から順に地表にマグマが移動している事を示唆す.この様な傾向は,1個の噴火の時系列でも成り立っておりマグマ溜まり内での結晶分化作用の研究に大きく貢献する成果である. 5.最近の噴火活動.1991年9月20にニアムラギラ火口より北北東15kmで割れ目噴火が発生した.この噴火直後に暴動が発生し調査を中断したが,ザイ-ルの研究分担者はその後の活動の推移の調査を続行している.CRSNの地震記録から前兆現象は噴火7日前にはじまっていたことや,噴火後2日目には溶岩噴泉は定常的になり,8日後には衰退した事が明らかになった.測量の結果,N30Eの走行を持つ400ー500mの割れ目から1週間で比高70m,基底の長さ400mの火山丘が成長した事を明らかになった.これらの結果は溶岩噴出量の重要な情報となった. 以上にまとめたいくつかの結果から,アフリカ大陸内部で今日進行している大陸内(Intraplate)ホットスポット火山についてこれまで以上に理解が進んだと言える.しかし,前述のように予期せぬ暴動発生のため調査を中断し計器が不十分な状態のままのものもあり,ザイ-ルの状況が安定すれば速やかに調査を再開する必要を痛感している. 隠す
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