研究課題/領域番号 |
02041022
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
荒牧 重雄 東京大学, 地震研究所, 教授 (60012895)
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研究分担者 |
DESHMUKH S.S インド地質調査所, デカン高原研究部, 部長
岩森 光 学術振興会, 特別研究員(PD) (80221795)
海野 進 静岡大学, 理学部, 助手 (30192511)
藤井 敏嗣 東京大学, 地震研究所, 教授 (00092320)
兼岡 一郎 東京大学, 地震研究所, 助教授 (30011745)
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研究期間 (年度) |
1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
1990年度: 5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
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キーワード | 洪水玄武岩 / 大陸玄武岩 / デカン玄武岩類 / 巨大斑晶玄武岩 |
研究概要 |
世界最大規模の玄武岩台地であるデカン高原については、その台地を構成する岩石の特性、それらを形成したマグマの噴出メカニズムをはじめとして未解決の問題が多い。 本年度はデカン玄武岩研究の予備的調査として、デカン高原北東部Jabalpur付近の岩体(以下、Jabalpur岩体)およびNarmadariver沿いの岩体のうちIndore付近のセクション(以下、Indoreセクション)の調査を行なった。さらに、次回以降の調査に備えるため、デカン玄武岩類が最も厚く分布する西ガ-ツ山脈の一部のル-トの予察も行なった。 Jabalpur岩体はデカン玄武岩類の分布の北東縁にあたり、これまで玄武岩の厚さが極端に薄くなると考えられていた。しかし、今回の調査ですくなくとも15枚の溶岩流が見いだされ、かなりの厚さがあることが判明した。更に、インド地質調査所の重力測定結果を考慮すると、Jabalpur岩体では溶岩流の厚さがNarmada river付近で最大となり、それから北側及び南側に向って岩体の厚さが薄くなっている可能性がある。更に、Jabalpur岩体の東西の基盤露出地域ではデカン玄武岩の供給源と考えられるダイク群が存在し、その走行は東西であることから、Jabalpur岩体の玄武岩類は現在のNarmada river沿いに存在した地溝内に発達した割れ目火口から噴出した溶岩類が南北に流出し、地溝を埋設してできた可能性が考えられる。この可能性については詳細な地質調査によって今後検討すべきである。 この岩体で見られる溶岩はおもにsimple flowと呼ばれるものであるが、一部にはcompound flowもみとめられた。compound flowは溶岩流の末端部しかも溶岩流の上部付近にのみ認められることから、simple flowの流速が衰える末端部ではcompound flowに移化する可能性が考えられる。この意味で、西ガ-ツの噴出中心部にみられる大量のcompound flowとは性格を異にするものである。また、一部にはpillow lava,hyaloclastiteもみとめられ、デカン玄武岩類の活動期に一部水中に噴出あるいは流入した溶岩流があったことが分かる。 また、Giant Phenocryst Basaltと呼ばれる巨大な斜長石斑晶(1辺の長さが数cm)で特徴づけられる溶岩流は少なくとも70kmの距離は連続した一枚の溶岩流として追跡できること、溶岩流の下部にはアアクリンカ-がまったく認められないことが判明した。これらのことは、溶岩流の粘性が極端に小さかったことを意味すると考えられる。また、斜長石斑晶は巨大ではあるが常に薄い板状の結晶であることから、急速に結晶成長を行った結果形成されたものであることが予想される。以上のことを考慮すると、このような巨大な斜長石斑晶をもつ溶岩流は噴出時には過熱状態にあって、噴出後流下中に冷却し、急激な結晶化が生じて形成されたものと考えられる。このように過熱状態にあったマグマを考えると、その粘性は低いはずであるので、デカン玄武岩類をはじめとする、いわゆる洪水玄武岩類が現在の噴火によって形成される溶岩流とは異なって異常に広い分布を示すことも理解できる。このアイデアの妥当性は今後採取された試料の解析を通じて検討する予定である。 Indoreセクションでは、25枚の溶岩流の試料を採取した。また、一枚の溶岩流内での化学組成、鉱物組成、岩石組織の変化を調べるために、特定の、比較的変質の程度の少ない溶岩流を選び、垂直方向および水平方向に数箇所づつ試料を採取した。このような検討は今後、化学組成を利用して層序を確認するためには欠かせない重要なものとなる。 また、Indore南方に分布する岩脈群からの試料採取も行なった。これらの岩脈のなかには地殼中部に相当すると考えられる岩石を捕獲岩として含んでいるもものあり、マグマの上昇のメカニズムや地殼物質との反応関係を調べるうえで重要な試料となる。現在、採取した試料の化学分析をおこないつつあり、今回調査した北東部とこれまで比較的多くの外国人研究者によって調べられている西ガ-ツ山脈の岩石との比較研究を予定している。
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