研究分担者 |
B.B. PATEL グジャラート州立ガンディ労働研究所, 教授
ANIL GUMBER グジャラート地域計画研究所, 研究員
SIRAJUL ISLA ダッカ大学, 歴史学部, 教授
PRAVIN VISAR グジャラート地域計画研究所, 所長
BINAY CHAUDH カルカッタ大学, 歴史学部, 教授
三宅 博之 北九州大学, 法学部, 講師 (60211596)
木曽 順子 熊本商科大学, 経済学部, 講師 (70192557)
福永 正明 拓殖大学, 語学研究所, 講師
脇村 孝平 大阪市立大学, 経済学部, 講師 (30230931)
篠田 隆 大東文化大学, 国際関係学部, 助教授 (20187371)
押川 文子 アジア経済研究所, 地域研究部, 職員
中里 成章 神戸大学, 文学部, 助教授 (30114581)
柳沢 悠 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (20046121)
中里 亜夫 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (60044343)
CHAUNDHURI Binay B. Professor, Dept. of History, Calcutta University
VISARIA Pravin Director, Gurajat Institute of Development Research
GUMBER Anil Researchr, Gujarat Institute of Development Research
ISLAM Sirajul Professor, Dept. of History, Dhaka University
PATEL B.B. ガンディー労働研究所, 教授
SIRAJUL Isla ダッカ大学, 歴史学部, 教授
PRAVIN Visar グジャラート地域計画研究所, 所長
BINAY Chaudh カルカッタ大学, 歴史学部, 教授
ISLAM Siraju ダッカ大学, 歴史学部, 教授
BANERJI Asit 国立インド経営研究所, 教授
CHAUDNDHURI ビナイ カルカッタ大学, 歴史学部, 教授
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研究概要 |
本プロジェクトは,日本人研究者とインド,バングラデシュの研究者とが密接な連携を保ちつつ,南アジア近・現代における経済変動が下層社会集団にどの様な社会変化を及ぼしてたのかというテーマに迫ったものである。 プロジェクトは,近代(英国植民地時代)における下層社会集団の歴史的形態とその変化を探る歴史班と,現代におけるこれらの問題を追及する現状分析班とに分れ,前者は平成2年度,後者は平成3年度に現地調査を行なった。そして,平成4年11月に東京でのワークショップを開催し,日本,インド,バングラデシュ3ケ国のほぼ全メンバーが参加し,歴史,現状の両班の研究成果を発表し,相互に,忌憚のない意見交換を行なった。会議は,英語で行なわれ,プロジェクト・メンバー以外の内外の専門家もこれに加わった。そこで発表された,12編の論文(全て英文)は,それぞれのメンバーがワークショップにおける議論を吸収して,書き直し,最終報告書として出版される。現在までに,その作業の終わった3本の論文は,S.Taniguchi,H.Yanagisawa,T.Shinoda,and F.Oshikawawa(ed.),Economic Change and Social Transformation in Modern and Contemporary SouthAsia(Part I),Hitotsubashi University,1993として既に印刷にふされている。残り,9本についても,1993年5月を目途に刊行の準備が進んでいる。 以上が,プロジェクトの概要とその成果の公表のあらましであるが,以下において,このプロジェクトによって明らかになった事,及び,なお将来の課題として残された諸点について述ベよう。 まず,歴史班の成果から見て行く。ワークショプでは,4編の論文が発表された。その内2編(S.Islam論文と脇村論文は,ヒンドゥー教が確立している平野部(旧ベンガル州とUP州)における下層階層に焦点をあて,他の2編(B.Chaudhuri論文と谷口論文)は,山岳,丘陵部に追いやられた非ヒンドゥー社会が平野部のヒンドゥー社会と交じりあう時に生じる諸問題に焦点をあてている。前二者の扱う問題領域は,階級問題としての側面が強いが,後二者が主に扱う問題は,むしろ,きわめて異質な共同体間の,或いは,小文化と大小化間の接触,統合の過程にあるといえよう。そして,これら4編の論文は,いづれも,英国植民地支配の確立した19世紀に,流通・経済構造に大きな変動が生じ,それを重要な契機の一つとして,平野部でも丘陵部でも,大きな社会変化が下層社会集団の中に生じた事を明らかにしている。 本プロジェクトの中心を成す現状分析班からは,8編の論分が発表された。それらは,今回の主たるフィールドとなったクジャラート州を含むインド西部の指定カースト,指定部族の全般的な就業構造の解明作業(Visari& Gumber論文),彼等の農村における存在状況(中里亜夫論文,福永論文),都市近郊における彼等の経済状況(柳沢論文),そして,都市部に於ける下層社会集団の問題については,彼等にとって最も典型的な職業である清掃業の現状分析(篠田論文,三宅論文),及び,工場労働者の中での下層社会集団の状況(B.Patel論文,木曽論文)に分ける事が出来る。これらの多様な実態調査から,重要な幾つかの共通論点が浮び上がってくる。農村では,下曽社会集団の多くは伝統的な職業に縛られ,未だ改善のきっかけが掴めない場合が多いが,都市,就中,都市の中〜大規模工場では,下層社会集団は最早不浄で忌避されるものではなくなりつつある。しかし,下層社会集団の内部に更に分析を加えると,彼等の間にも,積極的に高等教育を受け,高度な専門的職業に進出していく者を多く輩出する集団と,教育水準の向上が殆ど見られず,社会の底辺において伝統的な″不浄な″職業に甘んじている集団とが,かなり明確に分離してきている。また,後者の中でも,地方自治体等に雇用機会を得,かなりの高給と職の安定を得た人々と,その様な上昇のきっかけを掴めないままの人々への両極化が見られる。何故,この様な,違いが下層社会集団の内部に生じてきたのか。その諸要因を究明する事は,残された今後の重要な研究課題となるであろう。
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