研究分担者 |
JOSE Naranjo チリー地質調査所, 研究員
ALAN Nelson アメリカ合衆国地質調査所, 研究員
木庭 元晴 関西大学, 文学部, 助教授 (40141949)
松島 義章 神奈川県立博物館, 専門学芸員 (20124521)
海津 正倫 名古屋大学, 文学部, 助教授 (50127883)
NELSON Alan R. United States Geological Survey
NARANJO Jose A. Servicio Nacionale de Geologia y Mineria, Chile
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研究概要 |
プレ-ト境界に近い太平洋東岸のうち,アメリカ合衆国西岸およびチリ北部についての野外調査を実施した.主な結果は以下の通りである.アメリカ合衆国西岸地域:1)ワシントン州南部:ナセル川河口付近の沖積層中において,過去の地表面を示す証拠が少なくとも3層準において確認できた.上位から順に,埋没林,埋没泥炭層(上位),埋没泥炭層(下位)である.これらの層準とそれを覆う層との境界は不連続で,津波堆積物と解釈される薄い砂層を伴うことが多い.したがって地震に伴う不連続的な沈水が少なくとも3回起こったと推定される.その年代は約600,1540,および2100yrBPで,これらの値はワシントン州南部で既に知られている値とほぼ一致しており,上記の年代にかなり広範囲にわたって地震性沈降が生じたと推定される.これはファンデフカプレ-トの沈み込みと関係する可能性が大きい.なお,上記3層準のほかにやや不明瞭ではあるが2層準の埋没泥炭層があるので,地震の再来周期は数百年以内の短いものと予想される.2)オレゴン州ク-スベイ:海岸にほぼ平行に走る向斜軸に沿って大きなエスチュアリのサウススル-がある.その支谷の八つのエスチュアリにおいて沖積層の堀削調査を行い,沖積層の層序を明らかにし,年代測定および分析用の試料を採取した.これらのエスチュアリでは,地表下約6mの間に共通に認められる5枚の埋没泥炭層が確認され,不連続な沈降が繰り返されたことがわかった.現在多くの層準から採取した試料について年代測定および環境変化を知るための珪藻分析,硫黄の含有量の分析などを実施中である.これらの不連続的沈水は地震によるものと思われ,向斜構造の成長が地震に伴っていることを証明する資料が得られる可能性がある. チリ北部:1)ラセレナからメヒヨネス半島において,ESR年代測定のために1989年に地中に埋めたTLD素子を回収した(ほぼ90%の回収率).現在この資料をもとに,同年に採取した貝試料のESR年代測定を実施中で,5月までには結果が得られる予定である.2)メヒヨネス半島においては,海成段丘の地形と層序の検討,および活断層の精査を行った.その結果以下のことが明らかになった.(1)活断層はすべて正断層である.(2)正断層は,山地と低地を境する境界断層,山地内の分化に関係する断層,低地の浜堤群をきる小規模な断層の分けることができる.(3)これらの断層は平行して何本も現れ,一つの断層に沿って累積性がみられることは少ない.このことは逆断層でみられる傾向と異なる.(4)海成段丘と基盤の第三紀層との関係から,最古の海成段丘の形成期はかなり古く,第三紀にさかのぼる可能性が大きい.(5)海成段丘の高度分布から南北方向の傾動がよみとられる.(6)ESR年代結果をまたなければ確定的ではないが,本地域の隆起速度はかなり小さいようである.以上のことから,本地域の第四紀地殻変動は太平洋西岸の沈み込み境界でみられる地殻変動ときわめて異なるようで,本地域は第四紀には展張の場であり,隆起速度は小さかった.本研究の地形・層序の研究からプレ-トの挙動をさぐる上での手がかりが得られる見通しがある.
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