研究課題/領域番号 |
02041033
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 北海道大学 (1991) 金沢大学 (1990) |
研究代表者 |
片倉 晴雄 (1991) 北海道大学, 理学部, 助教授 (40113542)
中村 浩二 (1990) 金沢大学, 理学部, 助教授 (70111755)
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研究分担者 |
NOERDJITO W. ボゴール動物学博物館, 研究員
ABBAS I. アンダラス大学, 理学部, 講師
伊藤 文紀 北海道大学, 環境科学研究科, 学術振興会特別研究員
加藤 真 京都大学, 教養部, 助手 (80204494)
西田 隆義 京都大学, 農学部, 助手 (60208189)
ヌルジト ウォロー インドネシア科学院, ボゴール動物学博物館(インドネシア), 研究員
アバス イドルス アンダラス大学, 理学部(インドネシア), 講師
松本 和馬 林野庁, 森林総合研究所・多摩森林科学園, 農林水産技官
片倉 晴雄 北海道大学, 理学部, 助教授 (40113542)
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研究期間 (年度) |
1990 – 1991
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
11,000千円 (直接経費: 11,000千円)
1991年度: 6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
1990年度: 5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
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キーワード | インドネシア / 食葉性テントウムシ / スマトラ / ボゴ-ル / 個体群動態 / 昆虫生態学 / 進化生物学 / 害虫総合防除 |
研究概要 |
この研究課題の調査は、平成2、3年度の2年にわたり、主に、ボゴ-ルを中心とする西ジャワ州と、パダンを中心とする西部スマトラ州で行われた。いずれの年次にも、日本側メンバ-は1ないし3カ月間インドネシアに滞在し、インドネシア側メンバ-と共に、インドネシアにおける食葉性テントウムシの進化生物学と個体群動態に関する調査研究に従事した。この研究課題に参加した日本人研究者は合計7名(研究協力者を含む)、インドネシア人研究者は2名であった。研究者は主に昆虫を材料としているが、その専門は分類、進化、生態など多岐にわたっており、様々な観点から意欲点な研究が行われた。このプロジェクトの成果の一部は、平成3年6月に京都で行われた日本熱帯生態学会の第1回年次大会において、6題の講演として発表された。また、論文1篇が、現在印刷中であり、この他にも、数篇の論文を準備中である。得られた成果の大要を次に示す。 1.未記載種数種を含む計24種の食葉性テントウムシを採集した。これらは、採集地の位置が示すように生物地理学的には主に東洋区系の要素で占められていたが、一部にはオ-ストラリア区系の要素も含まれていた。また、23種について食草を確認した。食草は様々な分類群にわたっており、そのほとんどは今回新たに確認されたものである。私達の調査がボゴ-ル周辺とパダン周辺という極めて狭い地域で行われた点を考慮すると、今回得られた種数は驚くべきものであるといわねばならない(日本産は8種のみ)。スマトラから西イリアンにいたるインドネシア全体に、どれほどの種数が生息しているのか、マた、これらの島々で、東洋区系要素とオ-ストラリア系要素がどの様にして入れ替わるのかといった点については、今後の課題として残されている。 2.アジアの食葉性テントウムシの属、ないしは種群レベルの分類は著しく混乱しているが、今回の研究によって雌内部生殖器系の形態と、配偶行動のちがいが、このグル-プの上位分類と系統関係の推定を進めて行く上で極めて有効なことが判明した。 3.ニジュウヤホシテントウは東アジアに広く分布するナス科作物の重要害虫だが、今回の研究により、ジャワ、スマトラにはマメ科の雑草であるCentrocemaを食草とする個体群が分布すること、および、このニジュウヤホシテントウの2品種が、同所性種分化のモデルが想定しているいくつかの条件をみたしていることが明らかになった。食植性昆虫が同所的に種分化するか否かという点については現在も論争が続いているが、今回の発見は、同所性種分化の可能性を示唆する貴重なものである。 4.テントウムシの個体群動態に関しては、二つの分野で成果をあげた。まず、実験室内での飼育によって、作物、又は雑草を食草とする3種のテントウムシの生存ー繁殖スケジュ-ルを明かにし、その結果から内的自然増加率や繁殖価といった基本的な個体群パラメ-タを算出した。 5.野外個体群の動態は、ボゴ-ル植物園内に生息する2種に関して調査を継続している。インドネシアは平成3年の夏に非常に厳しい早魃に襲われたが、このことは私達の研究にとって極めて好運であり、異常気象が昆虫個体群の動態に及ぼす影響を調査する絶好の機会となった。予備的に、調査開始から1年分のデ-タを解析したところでは、この早魃の影響による個体数の減少が明瞭にあらわれている。今回の異常気象の影響を詳しく分析するためには、調査地における気象デ-タの解析と、今後数年にわたる個体群動態の継続調査が必要である。 6.長期的な野外調査や飼育実験を必要とする本研究課題を成功させるためには、日本側とインドネシア側の研究員の密な連携が必須であったが、インドネシア側受入機関の全面的なバックアップもあって、この点については非常にスム-スであった。本研究課題は今年度で終了するが、インドネシア人研究員からは今後も共同研究を継続したい旨の希望が出されている。継続調査を必要とする上記6の課題については、今後も日本側研究員とインドネシア側研究員が協力して研究を継続することで両者の意見が一致した。
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