研究分担者 |
BOROJEVIC Sl ノビサド大学, 農学部(ユーゴスラビア), 教授
大田 正次 京都大学, 農学部, 助手 (80176891)
SLAVKO Borojevic Professor, Faculty of Agriculture, University of Novi Sad, Yugoslavia
SLAVKO Boroj ノビサド大学, 農学部(ユーゴスラビア), 教授
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研究概要 |
本研究は約20年前から企画し,1988年の共同研究者との最終合意により計画が具体化した。 平成2年度:イタリア国立植物生殖質研究所の若手研究者パンタレオ ディテルリッチ氏の参加を得て,イタリア半島最南部バシリカ-タとカラブリア地方およびシシリ-島全島を縦横にムギ類を中心に植生を調し,栽培方式・利用などについて情報を収集し,種子を採集し,さく葉標本を作製した。イタリアでは18科892サンプルにおよぶ植物が採集できた。在来品種だけを栽培している畑はみられなかったが,しばしば在来品種と改良品種の混成栽培集団で多数のパンコムギとマカロニコムギの在来品種を採集できた。またイタリア半島南西部ではAegilops triaristataとAe.triuncials,シシリ-島ではAe.ovatavataがみつかった。中でも,シシリ-島では2ケ所のマカロニコムギ畑の脇でマカロニコムギとAe.ovataの自然雑種を発見した。 ギリシャでは,固有の生態環境をもつカルパトス島,ナクソス島,ペロポネス半島北部およびギリシャ北西部を調査した。予期した通り地域あるいは島固有の特徴を観察・比較でき,ムギ類在来種および近縁野生植物を中心に総数682サンプルを採集した。エ-ゲ海の2島で収集したAe.biuncialisはエ-ゲ海地域に固有の変種archipelagicaで,過去の調査結果と今回の調査結果により,その分布の全容を明らかにし,分布全域のサンプルを収集することができた。 大田はギリシャ北西部を調査し,さらにユ-ゴスラビアを列車と車で予備調査し,ユ-ゴスラビア側研究者と事前に打ち合わせ次年度実施計画を詳細に検討し次年度の準備をした。 平成3年度:ユ-ゴスラビア西部と南部のコムギとオオムギならびにそれらに近縁な植物の生態学的ならびに栽培方式や利用形態などの農学的調査とそれらの種子を採集し,さく葉標本の作製を中心に実施した。ユ-ゴスラビアでは10科637サンプルにおよぶ植物が採集できた。主要対象としたイネ科とくにムギ類でについては一粒系栽培型14,野生型2,二粒系皮性栽培型12,二粒系栽培型27,および普通系パンコムギ62系統を採集できた。特に野生一粒系コムギの新たな分布と皮性栽培二粒系の存在は意義深いものとなった。しかし,皮型栽培二粒系や在来品種だけを栽培している畑はみられず近代品種土は混植で主としてオオムギとともに飼料として用いていた。また,しばしば在来品種と改良品種の混成栽培集団で多数のパンコムギとマカロニコムギの在来品種を採集できた。コムギに近縁植物としては二倍体のAegilops comosa(2系統),Ae.uniaristata(5),四倍体のAe.cylindrica(A),Ae.triuncialis(32),Ae.ovata(33),Ae.triaristata(38)およびAe.biuncialis(35)がみつかった。さらに,ライムギは49,オオムギは28,野生のオオムギ20系統を採集した。 野生植物の分布は固有の生態環境との関係が示唆される。この点は昨年調査したエ-ゲ海の小島やシシリ-島あるいはその他の地域からの保存系統との比較研究の恰好の材料となろう。現在これらの収集品を栽培し,その遺伝的特性を詳細に分析しつつある。近い将来英文報告書にまとめ,採集系統の子孫種子を有用遺伝資源として適切に保存し,世界の研究者が活用できるようにしたい。 将来計画:1950年初頭に始まった故木原均博士を中心としたコムギとその近縁植物の系統発生の研究と遺伝子資源の探索と保存にかかわる一連の現地調査で残された所として西地中海沿岸地域があげられる。すなわち,今回の調査で一層スペインや北アフリカそしてアルプス山脈の谷筋に沿った調査が望まれる。
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