研究分担者 |
全 明純 韓国資源研究所, 研究員
金 性均 全南大学, 総合人間学部, 助教授
岡田 篤正 京都大学, 理学部, 教授 (90086174)
清水 洋 九州大学, 理学部, 助教授 (50178985)
石原 靖 横浜市立大学, 文理学部, 助手 (40232334)
古本 宗充 金沢大学, 理学部, 助教授 (80109264)
山田 功夫 名古屋大学, 理学部, 助教授 (60022670)
深尾 良夫 名古屋大学, 理学部, 教授 (10022708)
大倉 敬宏 京都大学, 総合人間学部, 助手 (40233077)
渋谷 拓郎 京都大学, 防災研究所, 助手 (70187417)
安藤 雅孝 京都大学, 防災研究所, 教授 (80027292)
JUN Myungsoon Korea Institute of Geology, Mining and Materials
鄭 承桓 韓国動力資源研究所, 研究員
鄭 富興 韓国動力資源研究所, 研究員
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研究概要 |
1.韓国と周辺の地震学的特徴 東アジアはプレートが収束する地域であり,変動帯に大規模な活断層や活構造があり,大地震が発生する。歴史記録によると韓国の地震活動は,現在は低調であるにもかかわらず,かなり活発な時期があったことが知られている。リニアメントや断層地形の解析から現在の応力軸に一致する走向のものを多数見いだすことができるが,多くの断層のうち,東海岸に沿うヤンサン(梁山)断層が大地震を将来起こす活断層かどうかは,最近韓国の専門家の間で論争が続いている。 2.研究計画と目的 この計画では2つの大きな柱を設定した。その1つは超高性能地震計(STS-1型)を韓国東海岸に近いポーハン(浦項)に設置して永久勧測点を作ることである。もう1つは,韓国の断層帯で微小地震の臨時観測を実施することであった。この臨時観測の主な目的を3つ設定した。1つは,この地域の地震の活動を知り,発震機構の求めることであった。2番目は,日本の浅い大きな地震を捕らえることであり,3番目は,日本海や大陸の下て起こる深発地震を捕らえることであった。それによって日本海の下のマントルの構造を知る手がかりが得られるはずである。東アジアのテクトニクスを知るために,また,地球内部の研究のために,韓国での地震観測と地震学の発展が必要不可欠であるという認識から,この研究は計画された。 3.研究成果と今後の課題 ボーハンのSTS型地震計で記録された日本付近の地震の表面波(レイリー波)を解析して群速度分散曲線を求めた。その結果,琉球背弧海盆の最上部マントルを伝わってきた波は,アジア大陸の場合より遅いことがわかった。この成果は,この観測点の重要性を示す1つの例といえる。ポーハンでは現時までに多くの重要な記録が得られており,グローバルな観測網の1点として役割を果たしている。 1991年7月6日から8月25日まで,ヤンサン断層の北部14か所に短周期地震計を置いて高感度観測を実施した。同じような勧測を1992年7月15日から8月20日まで,ヤンサン断層南部の10か所で再び実施した。観測期間中に日本で起こった地震も記録されている。関東でM6以上の地震であれば十分観測できることがわかった。深発地震もいくつか記録することに成功した。ヤンサン断層と周辺の断層にも微小地震が起こっており,釜山の南方沖の海峡にも比較的活発な地震活動があることがわかった。 ヤンサン断層が活断層である可能性がはっきりして,その決め手となる地形学的証拠を見つけるため,空中写真と地形図の解析および現地調査を実施した。その結果,ヤンサン断層はこの20〜30万年の間にずれを起こした,すなわち大地震を起こしたという確実な証拠が見つかった。将来また大地震を起こす活断層であるということになる。地震はどの程度の規模で,またどの程度の時間間隔で起こるのか,ということが次の,しかも急を要するテーマとなった。それを進めるためには,高感度地震計の常時観測網を作り,日本での経験によれば,10年以上連続観測を実施しなければならない。この仕事はもちろん韓国の人たちが行わなければならないが,そのためにも日韓協力で基本的な調査を済ませておく必要がある。地形学的調査を地域ごとに協力して進めていく必要もある。両国の研究者の交流を通じてデータを解析し,情報を交換しつつ研究を進めることが今後とも重要である。
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