インドネシアの天然薬物調査研究(第3次)

• 研究課題/領域番号: 02041054
• 研究種目: 国際学術研究
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: 学術調査
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 北川 勲 大阪大学, 薬学部, 教授 (20028830)
• 研究分担者: ムルニレマンチョ ハリニ インドネシア国立生物学研究所, ボゴール植物標本館, 講師 ; ウィリアディナタ ハリー インドネシア国立生物学研究所, ボゴール植物標本館, 講師 ; ウジ タハン インドネシア国立生物学研究所, ボゴール植物標本館, 講師 ; 大橋 一慶 静岡大学, 理学部, 助手 (90213826) ; 小林 資正 大阪大学, 薬学部, 助手 (40116033) ; 澁谷 博孝 大阪大学, 薬学部, 助教授 (50116042) ; MURUNI-ROEMANTYO Harini Senior Researcher, Herbarium Bogoriense, Research and Development Centre for Bio ; WIRIADINATA Harry Senior Researcher, Herbarium Bogoriense, Research and Development Centre for Bio ; WIRIADINATA ハリー インドネシア国立生物学研究所, ボゴール植物標本館, 講師 ; UJI Tahan インドネシア国立生物学研究所, ボゴール植物標本館, 講師
• 研究期間 (年度): 1990 – 1991
• 研究課題ステータス: 完了 (1991年度)
• 配分額: 9,500千円 (直接経費: 9,500千円); 1991年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円); 1990年度: 8,000千円 (直接経費: 8,000千円)
• キーワード: インドネシア / 天然薬物 / 薬用植物 / 民間医療 / スマトラ島 / ベンクル州 / リアウ州 / 北スマトラ州

研究概要

本学術調査は、世界有数の植物資源国であるインドネシアにおける新しい天然薬物資源の発掘、ならびに日本・インドネシア両国間の学術交流の発展を目的として、インドネシアの民間薬調査、民間医療調査、および薬用植物調査を行ない、新しい医薬品素材の開発を指向した化学的・生物学的研究のための基礎資料の作成を目指して進めている。
第1次学術調査(昭和60〜61年度)および第2次学術調査(昭和63年度〜平成元年度)では、ジャワ島およびバリ島における伝統的薬物“ジャムゥ生薬"の市場調査、ならびにヌサ・テンガラ・チム-ル州(チモ-ル島、フロ-レス島、スンバ島)における民間薬、民間医療、および薬用植物調査を行なった。
第3次学術調査では、第1次・第2次調査の重点調査地域であったサバンナ気候のヌサ・テンガラ・チム-ル州から、熱帯雨林気候のスマトラ島のベンクル州、リアウ州、および北スマトラ州に調査地域を移して実施した。
平成2年度の現地調査では、まず、ベンクル州で、ブキットバリサン山脈沿いのレジャン・レボン県において、計13箇所の村落を訪問し、種々の病気(例えば、マラリア、赤痢、発熱、下痢、腫瘍、リュ-マチ等)の治療に、ドクン(民間医)が用いている計247種類の薬用植物に関する情報を収集した。さらに、それらの情報をもとに計50種の化学研究用薬用植物を採集した。つぎにリアウ州では、ブキットバリサン山脈沿いのカンパル県および湿地帯のインドゥラギリ・フル県において、計7箇所の村落を訪問し、ドクンが民間医療に用いている計113種類の薬用植物に関する情報、および18種の化学研究用薬用植物を採集した。さらに、北スマトラ州では、特異な文化を持つことで知られているバタック族の民間医療に関する調査を行ない、種々の情報を収集した。
平成3年度の第3次学術調査の調査総括研究では、平成2年度の現地調査で収集した資料について、整理・同定・分析を行なった。まず、インドネシア側共同研究機関である国立生物学研究所・ボゴ-ル植物標本館において、採集した薬用植物の保存標本を用いて収集資料の組織学的研究を行ない、ほぼ全資料の同定を完了することができた。続いて、大阪大学で化学研究用薬用植物のアルコ-ル抽出エキスを調製し、薄層クロマトグラフィ-、高速液体クロマトグラフィ-等による各資料の含有成分分析を行ない、収集資料を材料とする化学的研究の基礎デ-タを作成した。さらに、各アルコ-ル抽出エキスを種々の溶媒により分画し、得られた分画について生物活性スクリ-ニング試験を依頼したところ、それらの多くに興味ある生物活性が認められた。調査記録については、フィ-ルドノ-ト、写真、録音テ-プ、ビデオテ-プ等について詳細な検討を加えたが、このうちインドネシア語から英語への翻訳は、インドネシア側研究分担者のタハン・ウジおよびハリニ・ムルニレマンチョが担当し来日して、大阪大学において行なった。
収集資料(植物標本および化学研究用資料)は、原則としてすべてインドネシア国立生物学研究所および日本側(大阪大学・薬学部)の双方で保管している。また、調査にかかわる記録類は、すべて大阪大学・薬学部に保管している。
以上の様に、本学術調査によって、スマトラ島のベンクル州、リアウ州、および北スマトラ州における薬用植物資源のほぼ全容を明らかにすることが出来たが、今後、本調査で収集された資料に関する化学的・生物学的研究の成果が待たれる。
本学術調査は、インドネシア科学院に所属するインドネシア国立生物学研究所との共同研究体制で進めているが、これまでの3度にわたる調査を経て、相互の学術交流にかなりの進展をみた。また、本学術調査は、各地(県・郡)の森林局・自然保護局等の機関の協力のもとで行なわれた。多民族・多言語国家であるインドネシアにおける学術調査では、この様な諸機関の協力体制は不可欠である。
我々は、「インドネシアの天然薬物調査研究」プログラムを完遂するために、第4次学術調査の調査地域をムルッカ州および中部スラウェシ州に移し、平成4年度にその実施を計画している。

研究成果

• [文献書誌] Isao Kitagawa: "Indonesian Medicinal Plants.I.Chemical Structures of Calotroposides A and B,Two New Oxypregnane-Oligoglycosieds from the Root of Calotropis gigantea (Asclepiadaceae)" Chem.Pharm.Bull.40. (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Isao Kitagawa: "Indonesian Medicinal Plants.II.Chemical Structure of Pongapinones A and B,Two New Phenyl Propanoids from the Bark of Pongamia pinnata (Papilionaceae)" Chem.Pharm.Bull.
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Isao Kitagawa: "Indonesian Medicinal Plants.III.On the constituents of the bark of Fagara rhetza (Rutaceae) (1):Alkaloids,Phenylpropanoids,and Acid Amide" Chem.Pharm.Bull.
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Isao Kitagawa: "Indonesian Medicinal Plants. I. Chemical Structures of Calotroposides A and B, Two New Oxypregnane-Oligoglycosides from the Root of Calotropis gigantes (Asclepiadcceae)" Chem. Pharm. Bull.40. (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Isao Kitagawa: "Indonesian Medicinal Plants. II. Chemical Structures of Pongapinones A and B, Two New Phenylpropanoids from the Bark of Pongamia pinnata (Papilionaceae)" Chem. Pharm. Bull.
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Isao Kitagawa: "Indonesian Medicinal Plants. III. On the Constituents of the Bark of Fagararhetza (Rutaceae) (1) : Alkaloids, Phenylpropanoids, and Acid Amide" Chem. Pharm. Bull.
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Isao Kitagawa: "Mammosides B and H_1,New Ionophoretic ResinーGlycosides from the Tuber of Merremia mammosa,an Indonesian Folk Medicine" Chem.Pharm.Bull.37. 1131-1133 (1989)
• [文献書誌] Isao Kitagawa: "Ionophoretic Activities of Oligopeptide Lactones and ResinーGlycosides in Human Erythrocytes" Chem.Pharm.Bull.37. 1679-1681 (1989)