研究分担者 |
狩野 賢司 九州大学, 農学部, 大学院学生
越智 晴基 広島大学, 理学部, 研究生
服部 昭尚 大阪市立大学, 理学部, 大学院学生
白木原 国雄 長崎大学, 水産学部, 助教授 (90196618)
仲谷 一宏 北海道大学, 水産学部, 助教授 (00002353)
柳沢 康信 愛媛大学, 理学部, 助教授 (90116989)
フィリ H. ザンビア水産研究所, タンガニイカ湖支所, 研究員
ションボ M. ザイール自然科学研究センター, ウビラ研究所, 研究副主任
ガシャ ガザ M. ザイール自然科学研究センター, ウビラ研究所, 主任研究員
成田 哲也 京都大学, 生態学研究センター, 助手 (40025440)
木村 清志 三重大学, 生物資源学部, 助教授 (00115700)
神田 猛 宮崎大学, 農学部, 助教授 (80183292)
山岡 耕作 高知大学, 農学部, 助教授 (20200587)
堀 道雄 和歌山医大, 教養部, 助教授 (40112552)
桑村 哲生 中京大学, 教養部, 助教授 (00139974)
カ゛シャカ゛ザ M. ザイール自然科学研究センター, ウビラ研究所, 主任研究員
ピアス M.J. ザンビア水産研究所, タンガニイカ湖支所, 所長
ガシャガザ M. ザイール自然科学研究センター, ウビラ研究所, 研究主任
川那部 浩哉 京都大学, 理学部, 教授 (60025286)
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研究概要 |
タンガニイカ湖沿岸域の魚類群集が複雑であり,ほとんどの種が湖岸の岩礁域に生息し,競争的であると同時に協力的な種間関係を保ちながら共存することが徐々に明らかになりつつある。特にカワスズメ科魚類の種分化が顕著であり,それぞれの種が多様な社会構造によって個体群を維持していることが明らかにされてきた。本調査では,特に群集組成のまったく異なるタンガニイカ湖の北部水域と南部水域の魚類個体群の社会構造,個体群間および種間の関係および個体群動態に係わる生物的要因を比較し,それぞれの種の生態的地位を検討した。また,沖合性魚類各種の資源量を推定し,種間の量的な相互関係の解を試みた。さらに,最終年度にはザイール国の魚類研究者ションボを日本に招へいし,タンガニイカ湖で得られた資料の解析とそれらの論文化を行ってもらった。 岩礁域のカワスズメ科魚類については,これまで必らずしも十分でなかった北部水域の魚類相を仲谷が分類学的に検討し,109種の中で81種を記録した。しかし,数種の未確認種を含む多数の標本について現在も検討中である。 名越,柳沢,神田,越智,服部,狩野,ガシャガザおよびションボはザイール国で北部水域の沿岸岩礁域に生息するカワスズメ科魚類のうち,これまでに生態学的知見に乏しい種について潜水観察によって調査を行った。典型的な基質産卵・保育型のNeolamprologus tretocephalusでは,子供の発育段階および両親の組合せによって両親の子供保護の役割が異なること,子供の数がある程度まで減少すると,子供を放棄することを明らかにした。Xenotilapia flavipinnisでは,子供の保護期間中にしばしば他の両親へ子供を預けるいわゆる“子預け"の現象が認められた。ParacyprichromisbrieniとCyprichromis microlepidotusは他の他の口内保育型の魚類と異なる特異的な産卵行動をすることが明らかにされた。藻類食者であるPetrochromis polyodonとPatrochromis orthognathusについて口内保育中の摂餌がテリトリーの防衛程度に関係することが明らかにされた。 越智,服部および狩野は,ザンビア国で南部水域の沿岸岩礁域に生息するカワスズメ科魚類について潜水観察による調査をした。タンガニイカ湖のLamprologiniの中で唯一の藻類食者のNeolamprologus mooriiの両親は子供が25mm以上に成長すると繁殖なわばり内で子供を攻撃するようになることが明らかにされた。Microdontochromis tenuidentatusの雌は口内保育中でも摂餌することが明らかにされた。Petrochromis fasciolatusでは雄の繁殖なわばりは,雄が除去されると新たな雄がそこになわばりをもつようになり,資源としての繁殖場所の不足していることが明らかにされた。Julidochromis ornatusの繁殖場所がN. mooriiの摂餌なわばりの影響を受けるという種間関係が明らかにされた。 南北両水域の岩礁性カワスズメ科の毎年の定量調査から,それぞれの種が特異的な場所を継続して利用していることが明らかにされた。このことについてはザイール国の研究者ガシャガザが1991年度に論文にまとめ,京都大学で理学博士の学位を取得した。 成田は,魚類の餌として極めて重要な沿岸域のエビ類の生態調査から,これらの生息量が水深によって異なり,月令によって湖底からの浮上数の異なることを明らかにした。 木村は,これまで明らかにされていなかった漁業上重要なニシン科魚類2科Stolothrissa tanganicaeとLimnothrissa miodonの年令と成長を耳石の日周輪か推定することに成功した。前者の寿命は約1年で最大体長は12cm,後者の寿命は2年余で最大体長は雌で18cm,雄で16cmであることを明らかにした。 白木原とフィリはザンビア国でタンガニイカ湖南部水域の沖合性魚類の分布および資源量の解析のため,過去の漁狩統計資料の調査と漁業実態調査を行い,現在これらの解析に当っている。また,白木原は,魚群探知機を用い北部水域の沖合性魚類の分布と資源の調査を行い,これらについても現在解析を進めている。さらに,漁獲統計資料から北部水域では沖合性魚類の資源量が近年著しく減少していることを明らかにしている。
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