研究課題/領域番号 |
02041062
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
小玉 一人 高知大学, 理学部・地学科, 助教授 (00153560)
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研究分担者 |
加瀬 友喜 国立科学博物館, 地学研究部, 研究員 (20124183)
前田 晴良 高知大学, 理学部・地学科, 助手 (10181588)
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研究期間 (年度) |
1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
7,000千円 (直接経費: 7,000千円)
1990年度: 7,000千円 (直接経費: 7,000千円)
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キーワード | サハリン / 上部白亜系 / 古地磁気 / ナイバ川 / テクトニクス |
研究概要 |
予備調査の際のソ連側研究者との討論や地質巡検の結果にもとづいて、主要研究調査地域をユジノサハリンスク市北方約50kmのブイコフ市近郊ナイバ川地域に決定した。この地域には新第三紀〜白亜紀前期(1千万年〜1億2千万年前)の堆積岩類が広く分布しているので、古地磁気層序や化石層序にもとづいたテクトニクスの解明に最適と考えられるからである。全野外調査期間(40日)のうちの約1カ月を同地域に費やし、残りの1週間をユジノサハリンスク市やホルムスク市周辺の第三系の調査にあてた。 ナイバ川地域に分布する上部白亜系は層序が特によく連続しており、軟体動物化石を豊富に産するため、極東における上部白亜系の模式層序のひとつとして従来より注目されたきた。今回の調査ではさらに、古地磁気層序や化石層序にもとづく詳細な時代対比を行うため、化石群の産状や堆積相の観察を重点とした詳細な野外地質調査を行った。その結果、同地域の白亜系の年代はアルビアン階〜マストリヒシアン階にまでおよび、全層厚は5000m以上に達することが判明した。これらの地層群は、岩層により下位から、アイ層、ナイバ層、ブイコフ層、およびクラスノヤルカ層の4層に区分される。特に最上部のクラスノヤルカ層では、カンパニアン階からマストリヒシアン階にいたる連続層序を観察することができた。北海道では最上部白亜系の層序を1ル-トですべて観察することは可能であるのに対し、ナイバ川地域では環太平洋の主要な化石帯がすべて含まれるばかりでなく、その層序も非常に明瞭であることが明らかになった。一方、第三系は一部に陸生層を含むものの、漸新世から中新世までのほぼ連続した地層群からなる。従って、今回の調査で得られた地質デ-タと古地磁気の結果を組み合わせれば、上部白亜紀から第三紀の精密な時代対比にもとづいたサハリン南部の詳細なテクトニクス史を明かにできるであろう。 岩石磁気測定試料はすべて、内径25mmのダイヤモンドビットを装着したポ-タブルガソリンエンジンドリルを用い、現地露頭で採取した。方位付けは磁気コンパス又はサンコンパスを用いて行った。主に泥岩・シルト岩・細粒砂岩など対象とし、スランプや断層などで堆積構造が乱されている場所は避けるように努めた。各採取地点において、傾動補正を施すために地層の走行・傾斜を測定した。このようにして白亜系118地点757本、第三系68地点467本、総計187地点から1224本のコアサンプルを採取した。これらのコア試料を長さ22mm毎に切断し、総計2160個の測定用サンプルを得た。これまでに第三紀試料の約4分の1をパイロット試料として、段階交流消磁ないし段階熱消磁を施しながら残留磁化を測定した。これらのうち安定な残留磁化を保持するものは約3分の1であった。自然残留磁化強度は非常に弱く、10^<-4>〜10^<-3>A/m程度であった。安定な残留磁化成分の方位は、古第三紀の試料では30゚〜60゚東偏するものが多いが、新第三紀以降の試料では若干の西偏ないし現在の磁北方向をもつのが多数を占める。このような地質年代と古地磁気方位の系統的な変化は、本研究グル-プによって明かにされた北海道の第三系の古地磁気方位の変化傾向と調和的であり、北海道とサハリンが少なくとも第三紀において同一のテクトニクスに支配されていたことを強く示唆する。 これまでの測定実験の結果、第三紀堆積岩類の多くは保持力の異なる複数の残留磁化成分をもち、それぞれが異なる磁性鉱物に起因する可能性のあることがわかってきた。そこでこれらの磁性鉱物同定するために、インパルス形強磁場発生装置を新たに製作した。この装置は、大容量コンデンサ-の放電電流をソレノイドコイルに流すことにより、巾10ms程度のパルス形強磁場を発生させることができるものである。発生磁場強度は1.5テスラ以上で、磁鉄鉱に容易に飽和残留磁化を印加できるばかりでなく、赤鉄鉱でも飽和残留磁化の20%〜40%の等温残留磁化を印加させることができる。したがって磁性鉱物の同定ばかりでなく、飽和残留磁化異方性の解析にも利用することができる。
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