研究概要 |
1.目的:人間のすベての動作の根源は、2本の足の裏で大地に立つ「直立姿勢」である。その直立姿勢を安定保持する能力を「直立能力」(立ち構え:身構えと気構え)という。本研究の目的は、その民族の「直立能力」が、地理的・社会的環境によって、どのような影響を受けているかを定量的に評価し、その差異を比較検討することにある。 2.方法:被験者にピドスコ-プのステ-ジの安定した直立姿勢をとらせ、この時の接地する足底面を35mmカメラで撮影し、また同時に正面から全身の直立姿勢をヴィデオカメラによって録画した。35mmカメラで撮影した写真を実寸大にトレ-スして、接地足底面の形態を計測し、それを解析した。 3.対象:チェコスロバキア共和国において、3ー6歳の保育園児男女36名(南モラヴィヤ)、6ー11歳の小学校児童男女100名(プラハ)、17ー18歳の高校生男女22名(南モラヴィヤ)、20ー67歳一般成人男女56名(プラハおよび南モラヴィヤ)を対象とした。また、プロサッカ-選手21名(プラハ)については、トレ-ニングの前後に計測した。さらに、ザトペック夫妻の計測を行った。 4.結果 (1)足長(Hirasawa Line)は18歳まで増加の傾向を示すが、それ以上はほとんど変化しない。特に17歳以降において男女差が著しい。 (2)足幅X(Hline)を垂直に横切る足底中部と足底後部を分ける足幅)は、男子は4ー10歳、女子は8ー20歳にかけて減少の傾向を示した。また、17歳から29歳にかけて、女子が男子より小さい値を示した。 (3)足幅Y(Hline)を垂直に横切る足底中部と足底前部を分ける足幅は、男子は9ー17歳、女子は8ー1歳にかけて著しく増加する。これは、女子は男子より成長時期が早いことを裏付ける (4)足角(接地足底の内側線と外側線とのなす角度)は、全体的の傾向として狭小である。これは、日本人の足のパタ-ンと顕著な相違点である。 (5)足長と足幅Xの左右差は認められなかった。足幅Yは全般的に右足が長い。 (6)サッカ-選手の練習前後の値には顕著な差は認められなかった。 (7)ザトペックの足は、A.アベベ,F.ショ-タ-,J.スミスらのように、マラソン選手特有の指並びであった。また、夫人の左足は槍投げによって鍛えられた頑丈なものであった。 5.結論:チェコスロバキア共和国の255名を対象に、直立能力の安定を保持する接地足底面の解析から、次の結論を得ることが出来た。 (1)土踏まずの部分が大きく、この部分の接地面が極めて小さい。 (2)足角が小さく、細長いスマ-トな形状である。 (3)比較的低年齢で成人の形状に達することが示唆された。
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