研究課題/領域番号 |
02041075
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
松高 二郎 (橘高 二郎) 北里大学, 水産学部, 教授 (20050346)
|
研究分担者 |
MONTGOMERY S ニューサウスウエルズ州水産研究所, 室長
WEAR Robert ビクトリア大学, 臨海実験所, 講師
BOOTH John D ニュージーランド農水省, 水産研究所, 室長
西田 周平 東京大学, 海洋研究所, 助手 (70134658)
早川 康博 北里大学, 水産学部, 助教授 (30129259)
関口 秀夫 三重大学, 生物資源学部, 助教授 (10024829)
BOOTH D. John New Zealand Ministry of Agri. and Fisheries, Fisheries Res. Centre ; Chief
|
研究期間 (年度) |
1990 – 1991
|
研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
|
配分額 *注記 |
8,500千円 (直接経費: 8,500千円)
1991年度: 4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
1990年度: 4,500千円 (直接経費: 4,500千円)
|
キーワード | イセエビ / ミナミイセエビ / Jasus edwardsii / Jasus verreauxi / 中腸腺 / 定着 / コレクタ- / プエルルス / フィロゾ-マ / 塩分耐性 |
研究概要 |
イセエビ類の幼生はフィロゾ-マとして外洋域で脱皮成長し、約1年にも及ぶ長期間のプランクトン生活を追っているが、プエルルス変態すると一路沿岸に向かって遊泳し、岩礁域に定着することが知られている。しかし、変態する海域、変態後の生理生態および行動、プエルルスの期間、プエルルス期の体内の変化等についてはよく解明されていない。これは天然において透明なプエルルスの発見され難いこと、またフィロゾ-マからプエルルスへの飼育が極めて困難なことが原因している。最近、研究代表者はフィロゾ-マの完全飼育をイセエビの数種類について達成し、変態前後の体の変化、プエルルスの期間、プエルルス期の摂餌の有無等の重要な知見を明らかにした。しかし、飼育による変態個体はなお少数でプエルルスの生理生態の解明には不充分である。ニュ-ジ-ランド北島東岸キャッスルポイント沿岸では来遊するJasus edwardsiiのプエルルスが多く、共同研究者Boothの考案したコレクタ-で、様々の成育段階のプエルルスおよびポストプエルルスが採集されている。本研究では、同地でこれらの採集と採集個体の飼育実験を行うことにより、ミナミイセエビの回帰機構を解明することを試みた。また、ニュ-ジ-ランド北島北端にはJ.verreauxiが棲息しているがその採集記録は稀である。一方、本種はオ-ストラリア・ニュ-サウスウエルズ州沿岸にも分布している。この種のプエルルスの回帰機構についてもニュ-サウスウエルズ州クロニュラでの採集および実験室での幼生の完全飼育から解明を試みた。 1)プエルルス来遊量の季節的変化 平成3年1〜2月の18日間、コレクタ-12基および同11〜12月の10日間、コレクタ-20基を用いたキャッスルポイントにおけるプエルルス+ポストプエルルスの採集個体数は198尾+47尾および40尾+13尾であった。1日1基当りの採集尾数で比較すると、南半球の初夏11〜12月から盛夏1〜2月にかけて、プエルルスの来遊量は約4倍に増加している。 2)プエルルス定着量の局地分布 キャッスルポイントにおいては打線の小石の下にプエルルスの着底が見られる。平成3年1〜2月には15日間で755個の石を調べ、プエルルス106尾+ポストプエルルス13尾を採集した。また湾国部にBooth型コレクタ-を垂下し来遊直後のプエルルスを多数採集、湾央部では小型のそり網を曳き少数ではあるがプエルルスを採集した。 3)プエルルスの中腸腺の変化 飼育によると変態直後のプエルルスはガラス状の透明であるが、日数の経過につれて中腸腺は一対の器官として認められ次第に肥厚し、またプエルルスの体表には赤味がかった色素が沈着する。プエルルスの透明個体、色素沈着個体およびポストプエルルスの中腸腺を組織学的に観察すると、初期の中腸腺の前葉・中葉の先端部には脂肪体が存在するが、プエルルスの成育に伴い、それは減少し、中腸腺細胞内に大量の脂肪滴が取り込まれているのが確認された。プエルルス期には全く摂餌しないことが昭和63年度調査で確認されているが、このことから脂肪体はプエルルスの栄養貯蔵器官であると考えられる。 4)プエルルスの潜砂 キャッスルポイントの海底はシルトで覆われている。シルトを敷いた水槽にプエルルスを収容すると数分〜数十分後にプエルルスは俊敏に潜砂する。潜砂は日中に見らるが、砂上への出現は日没後である。なお潜砂行動は透明なプエルルスほど顕著で、色素沈着個体は潜砂できない。 5)プエルルスの回帰機構 以上の研究成果に基づきJ.edwardーsiiの沿岸回帰機構を推定すると次のようになる。沖合の渦流域で成育した最終令のフィロゾ-マは所定の日数を経て変態する。長い一対の触角を備えたプエルルスは摂餌することなく、ひたすら沿岸に向かった5対の遊泳肢の推進力で遊泳する。夜間は表層近く、日中は中層に沈んで遊泳を続けるものと考えられる。プエルルスの中腸腺が肉眼的に認められるのは変態後約10日間である。恐らくこの期間内にプエルルスは沿岸に到達するものと考えられる。沿岸の岩礁をプエルルスはシェルタ-として好むが、一時的には潜砂し、その後岩礁に到達する場合もあると思われる。なお、クロニュラではJ.verreauxiのプエルルスは採集されなかった口
|