研究課題/領域番号 |
02041082
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
小西 正捷 立教大学, 文学部, 教授 (10161960)
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研究分担者 |
近藤 英夫 東海大学, 文学部, 助教授 (70119676)
後藤 健 東京国立博物館, 学芸部・東洋課・西アジア, エジプト室 (40132758)
GOTO Takeshi Curator, Middle East Section, Tokyo National Museum
赤司 善彦 九州歴史資料館, 調査課, 主任技師
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研究期間 (年度) |
1990 – 1991
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
14,300千円 (直接経費: 14,300千円)
1991年度: 7,500千円 (直接経費: 7,500千円)
1990年度: 6,800千円 (直接経費: 6,800千円)
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キーワード | アラビア湾 / 古代文明 / ディルムン / マガン / メルッハ / ウンム・エッ・スジュ-ル / インダス文明 / メソポタミア文明 / アラビア湾岸 / 先史時代 |
研究概要 |
本研究は平成2〜3年度にわたる継続研究であり、平成2年度には主としてカタル国における古代遺跡の考古学的発掘調査を実施した。これに続く本年度(平成3年度)の研究では、その隣国であるバハレ-ン国に主力を注ぎ、伝承に包まれた著名な遺跡である、アイン・ウンム・エッ・スジュ-ル遺跡の発掘調査を実施した。 この遺跡はバハレ-ン本島北西部のディラ-ズ村の東側にあり、かねてデンマ-クの調査隊が発掘を実施した前3千年紀のディラ-ズ神殿遺跡から約500メ-トルを隔てている。アイン・ウンム・エッ・スジュ-ル遺跡を主たる調査対象とした理由は次のとおりである。 1.平地遺跡であり、地表に「都市II期」(前3千年紀末頃)に相当する型式の土器片が散布していたため、本研究の主たる課題であるバルバル文化の遺跡であることが予想された。また複数の文化層からなる集落を擁していると予想されたため、インダス文明およびメソポタミア文明と交流があった同文化の編年を層位学的に証明できるのではないかと期待された。 2.本遺跡の最大の特徴であるが、数基のマウンドに囲まれた大規模な窪地が知られており、加工された巨大な石材が散布していた。それがバルバル文化に伴うものであるか、あるいは後世のものであるかが、かねてより大きな問題であった。前者であれば、同文化に属する公的建造物である可能性が高く、本研究の最大のテ-マである湾岸における交易、文化的交流の解明に大きく寄与することができると考えられた。また後者であれば、後8世紀にウマイヤ朝のカリフ、アブドゥル・マレク・イブン・マルワ-ンによって破壊された井戸跡とする土地の伝承との関係がでてくるが、表面踏査の結果では前者の可能性が非常に大きかった。 平成3年12月半ばから平成4年1月末まで、この遺跡の調査を実施し、集落部分、窪地部分のトレンチ発掘を実施したほか、1954年にデンマ-ク隊が部分的に調査しながらも、未報告であった「井戸の神殿」と呼ばれる遺構の再調査を行った結果、以下のような所見が得られた。 1.集落跡の存在が予想された地域では、漆喰塗りの床をもった数棟の建物跡及び大型の炉跡が発見され、出土遺物から、前2000年頃の集落の存在が確認された。しかし他方、文化層は1時期のものであり、複数の層位はもたないことが確認された。 2.巨大な窪地においては、径30メ-トルほどの人工的な池状の遺構が確認された。また地表に見られた石材は、それを取り囲むように配置された多数の建造物の名残りであり、出土遺物より、いずれも前2000年頃すなわち前述の集落とほぼ同時期の造営からなるものと確認された。 3.「井戸の神殿」については、デンマ-ク隊の調査で得られた1対の動物像、香炉、石製容器などが、同国の博物館にあるが、年代について、また構造について、詳細な報告はなかった。本調査により、この遺構は前2地区同様、前2000年前後のものであることが確認され、かつそれは少なくとも3つ以上の段階にわたるものであることが確認された。構造についても詳細なデ-タが新たに得られた。 4.さらに周辺の踏査を実施した結果、本遺跡アイン・ウンム・エッ・スジュ-ルは、前述のディラ-ズ神殿と連続するものであり、1つの巨大な都市遺跡のある特殊部分を構成していた可能性が、極めて強いことが判った。 このように、本研究の実施により、インダス文明、メソポタミア文明との交渉を生業としていた湾岸文明の都市構造が、従来考えられていた以上に大規模かつ複雑なものであった事実が解明されたことは、本領域の研究に大いに寄与するものと考えられる。
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